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○宮崎委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、趣旨の説明を聴取いたします。住法務大臣。
    ―――――――――――――
 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――

○住国務大臣 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、最近における渉外婚姻の増加等の実情にかんがみ、及び昭和五十五年七月十七日に我が国が署名した女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に備えるため、国籍法の一部を改正するとともに、これに関連して、戸籍法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は次のとおりであります。
 まず、国籍法につきましては、第一に、現行法におきましては、子は原則として父が日本人であるときに出生により日本国籍を取得するものとされておりますが、これを改め、子は、父または母が日本国民であるときは、出生により日本国籍を取得するものとする父母両系血統主義を採用することといたしております。
 第二に、準正により日本国民の嫡出子たる身分を取得した外国人、日本の国籍を留保しなかったことにより日本の国籍を失った者等の国籍の取得を容易にするため、所定の要件を満たす者は、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができるものとする届け出による国籍の取得の制度を新設することとしております。
 第三に、帰化の条件の整備を図るため、日本国民の配偶者である外国人の帰化条件については、その者が夫であるか妻であるかにかかわらず、同一の条件を定めるものとするとともに、生計条件、重国籍防止条件等についても、これを緩和することとしております。
 第四に、父母両系主義の採用に伴い増加する重国籍の発生の防止及びその解消を図るため、外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失うものとし、現行法の国籍の留保制度を国外で出生じた血統による重国籍者にも適用するものとするとともに、重国籍者は成年に達した後二年以内にいずれかの国籍を選択しなければならないものとする国籍の選択の制度を新設することといたしております。
 第五に、経過措置として、改正法施行後三年間は、改正法施行前に日本国民である母から出生じた子及びその者の子は、所定の要件を満たすときは、法務大臣に届け出ることにより日本の国籍を取得し得ることとしております。
 次に、戸籍法につきましては、第一に、国籍法の改正により国籍の選択制度が新設されることに伴い、日本の国籍の選択の宣言の届け出及び外国の国籍を喪失した場合の届け出等に関し所要の規定を設けることとしております。
 第二に、容易に日本の国籍の留保の届け出をすることができることとするため、その届け出の期間を伸長するとともに、父または母以外の法定代理人も留保届をすることができることとしております。
 第三に、現行法上は、外国人と婚姻をした場合には、日本人間の婚姻の場合と異なり、新戸籍を編製しないものとされておりますが、これを日本人間の婚姻の場合と同様に、婚姻によって新戸籍を編製することとしております。
 第四に、現行法上、外国人と婚姻をした者が外国人である配偶者の称している氏を称しようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、その旨の届け出をしなければならないこととされておりますが、これを改め、婚姻の日から一定期間内は家庭裁判所の許可を得ずにその氏の変更の届け出をすることができることとするとともに、氏の変更をした者が離婚をした場合には、離婚の日から一定期間内は、家庭裁判所の許可を得ずにその氏の変更の届け出をすることができることとしております。
 また、戸籍の筆頭者及びその配偶者以外の者で、父または母を外国人とするものは、現行法上、その氏を変更することが認められておりませんが、これを改め、家庭裁判所の許可を得れば、その氏を変更する旨の届け出をすることができることとしております。
 以上が国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

○宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――

○宮崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る六日、参考人の出頭を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――

○宮崎委員長 これより国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案について質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森清君。

○森(清)委員 今回、国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案が提出されまして、ただいま大臣から提案説明をお伺いしたわけでありますが、国籍法は国民の範囲を定める最も重要な法律でありますから、その改正につきましても慎重な検討を要すると考えます。
 法務省では長年にわたってこの問題を研究し、また婦人の差別の撤廃に関する条約の批准との関係もあり、それぞれ検討されたと思いますが、今回の改正案を作成した経緯、そしてまたその考え方の大要を先ほどの提案説明に補足してお伺いしたいと思います。

○枇杷田政府委員 現在行われております国籍法は昭和二十五年に制定されたものでございますが、その当時の我が国の情勢が、その後の我が国の経済成長及び国際化の状況によりまして大分変わってまいりました。それに伴いまして、いわゆる国際結婚がだんだんとふえるようになりました。一方、先ほどお話しございました婦人差別撤廃条約につきまして昭和五十五年七月十七日に我が国も署名をするということになってまいりました。そういう情勢のもとで、現在の父系血統優先主義の現行法についての見直しの機運が高まってきたわけでございます。
 それによりまして、私どもといたしましてはかねがね諸外国の法制がどう動いておるかというようなことも研究をしておったところでございますが、昭和五十六年の暮れごろから法制審議会におきまして国籍法部会を設けて、国籍法についての改正すべき点についての諮問が法務大臣から出されて審議がなされておったところでございます。
 その結果、本年の二月二十三日に法制審議会で改正すべき点についての答申がなされ、またそれに伴いまして戸籍法についての改正すべき点が民事行政審議会におきまして二月十六日に答申を得ております。それに基づきまして今回御審議をいただいております改正案を取りまとめた次第でございますが、その改正の主たる点は、先ほど法務大臣から御説明がありましたように、現在の父系血統主義を父母両系主義に改めるということを中心といたしまして、次に帰化につきまして日本人の配偶者の帰化条件についての差異、これを同一にするという点、また父母両系主義をとるということになりますと二重国籍が飛躍的に増加してまいりますので、それに対処するための方策として留保制度を見直すとか、選択制度を導入するとかというような措置を講ずることにいたしまして、父母両系主義を採用すると同時に二重国籍が増加をしないようにその防止を図るという線でこの法案がまとめられた次第でございます。

○森(清)委員 国籍法の改正に関しまして、国籍というものの本質といいますか、そういうものについて多少考えてみたいと思うのであります。地球上に人類が住んでおりますが、これはそれぞれ主権国家があり、そしてその主権国家が分かれておるわけでございまして、そしてそこに住む我々人間、個人というものはそれぞれ人権を保障され、あるいは権利を主張し、あるいは生命、身体、財産を守ってもらう、これはすべて国家というものを通じてなされるものであり、また最終的には国家の力によってそれが実現するものであり、また国家はそういう人間を保障する、保護する責任を持っている、このように考えるのであります。
 そこで、そういうことになる限り、人間というものは生まれたときにおいていずれかの国家に所属をする、いわゆる国籍を取得するということでなければならないし、またその国籍というものは、主権国家が分かれている限り単一の国家に属すべきものである、これが国籍の本来的な意義である、私はこのように考えるのであります。そうしてまた、実際上、法制上においても、公法上の関係はもとより、私法上の関係においても、先ほど申し上げましたように国家を通じて国家の法制のもとにおいて主張できるわけでございますが、そういう意味でいわゆる国籍唯一の原則とか国籍単一の原則というもの、これは事の当然の問題であり、そしてまたそういうことが国際法学者間においてもあるいは成立しておる条約等にもあらわれておると思うのでありますが、そのように国籍というものは唯一、単一のものが原則であり、すべての人はどこかの国家に属さなければならないという意味とそれは唯一の国家に属すべきものである、こういう考え方を持っておりますが、政府においては国籍、その本質についてどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。

○枇杷田政府委員 ただいまお話しございましたように、一人の人間に対して複数の国家が対人主権を持つ、また主権在民の国におきましては一人の者が複数の国に対しての主権を持つということは一個の矛盾を生ずることでございますので、国籍唯一の原則というのが世界における国籍を考える場合の一つの重要な原財ということにされておるわけでございまして、私どもも、その原則は国籍法の制定あるいは国籍法の改正に当たりましても非常に重要な準拠すべき原則であると考えております。

○森(清)委員 その次に、国籍の得喪の原則についてお伺いしたいと思うのであります。
 国籍を取得するということは出生によるわけでありまして、これが生来の国籍あるいは根源国籍と言われておるわけであります。近代国家が成立いたしますと、まずその取得した国籍、特定の国とそういう関係に立つわけでありますが、本来ならばそういう関係に立った以上忠誠非解消といいますか永久忠誠主義というものが原則であったはずであります。特に近代国家が成立したときはそうであったと思いますが、その後、人間の移動も盛んになる、あるいは移住ということも行われる、あるいは領土の変更ということもしばしば行われるというふうなことで、だんだん国籍を離脱するということ、あるいは新たに他の国の国籍を取得するというふうなことが現象として間々あらわれてくるし、またそれを国家として認めざるを得なくなる、こういうような現実が生じてまいりました。
 そして、思想もだんだんそのように変化してまいりまして、例えば国籍は強制せずというふうな考え方になる。特に今の我が国の憲法は、これはアメリカによって押しつけられてつくらされた憲法でありますから、アメリカの国籍に関する考え方、すなわち国籍離脱の自由というようなことも非常に強く出ておるようでありますが、それはそれといたしまして、私は国籍取得の原則について、そのような考え方の中からそういう原則が変化したということは認められるし、国籍離脱の自由というものは認めてもいいわけであります。
 しかし、国籍は強制せずというその法諺でありますが、これは要するに、国籍を取得するとか変更する、喪失するということがすべて個人の自由な意思によって行われるべきであるという意味ではなくして、国籍を与えるあるいは国籍ができるということは、これは個人の自由な意思とは無関係にまず生ずるものである、そうして何らかの理由によってその個人の意思を確かめながら変更を認める必要が生じた場合に、一定の手続によってあるいは国家の承認によって国籍の得喪、変更が行われるべきものである、個人がどこの国の国籍を持つか、どうするかということが完全に自由であるというふうには考えられないのであります。
 また、特に国籍というのはある意味では法的な関係でありまして、ある人間がどのような人種に属するとか、どのような習俗、風習を持っておるとか、どのような歴史、伝統を本人が負っているかということは、もちろん、国籍の得喪について自由な意思で得喪を認める、ある段階においてはそういう事情はできる限りしんしゃくするということがあっても、これは自動的に決まるのが本源的であり、それは国籍の本質上当然である。ただ、今申し上げましたように、自由な意思を表示させて得喪、変更をしようとするときに、そのような個人の希望、意見を十二分に配慮してやる、これが国籍は強制せずの考え方である、強制せずといってもそういう考え方であってしかるべきである、このように考えるわけでありますが、その点についての政府の見解はいかがでございましょうか。

○枇杷田政府委員 どういう人に自国の国籍を与えることにするか、あるいはどういう場合に自国の国籍から離すことができるかということ、いわゆる国籍法の内容をどう決めるかということは各国の主権によって与えられている権限であるというふうに国際的に承認されているところでありま
して、我が国でもそのような見解をとっておる次第でございます。したがいまして、どのような条件、どのような事実のもとに日本の国籍を与えるかということは国籍法で決めるべきことでございます。また、国籍を離脱する場合にも、どういう場合に離脱をさせるかということは国家主権の作用として決めるべき事柄だろうと思います。
 先ほどお話しございましたように、本来、一たんある国の国籍を取得した者は終生その国籍のもとにあるというのが原則であろうかと思います。そしてまた、ある時代におきましてはそれを永久不変のものとしたというような国、そういう時代もあったかと思うのでありますけれども、次第に国家間での人間の交流が多くなる、国際結婚も出てくるというようなことから二重国籍の問題が生じてまいりますと、そういう場合に、その衝突した二重国籍をどのように解消していくかということに関連いたしまして、離脱というのをどの程度認めるかというのが各国の法制でいろいろ考えられるようになったわけでございまして、そういう意味で、離脱を認めるという意味では、国籍強制主義というものがだんだんと緩和されていくというような形になってきております。
 我が国におきましても、離脱を認めるということから、いわゆる国籍強制主義というものをなくしたというふうに言われておるわけでございますが、それも無制限にということではございませんで、二重国籍である場合に、その衝突を解消するという場合に限って離脱を認めるというふうにいたしておるわけでございます。その離脱をする場合におきましても、我が国におきましては、憲法の規定によりまして、本人の意思によって、二重国籍である場合には離脱を認めるという法制をとっておりますけれども、外国におきましては、ある条件がなければ二重国籍であっても離脱を認めないという法制もあるわけでございまして、全く個人の自由意思で定められるべきものだというふうに国際間で原則が立てられているというふうには考えられない次第でございます。
 そういうふうな観点から見ますと、ただいまの御意見は国際間でも大体認められておる考え方ではなかろうかというふうに考えております。

○森(清)委員 ただいまこのようなお答えをいただいたわけでありますが、この国籍が抵触をする事態というものが、これはやむを得ない、どうしても出てくる現象であります。
 と申しますのは、これはもう周知のことでございますが、国籍の取得に関するやり方が国によって違う。しかも、それが主権国家としてどのような者に自国の国籍を取得させるか、与えるかということは、それぞれ全く国内法の問題であって、それぞれの国家が主権的な作用によってそれを行うわけでありますから、そこに統一的な原則がないわけであります。したがって、そこに積極的な抵触、いわゆる重国籍、それから消極的な抵触、無国籍というものがそういう制度の違いによって生ずることはやむを得ない点があるわけであります。
 そこで、まず国籍取得の原理、原則についてお伺いしたいのでありますが、これは先ほど言われましたとおり、本来的な国籍、根源的な国籍としては出生によるわけでありまして、例えば我が国は原則として血統主義をとっておりますが、これは例えばイギリスのようにいわゆる封建的なというか、そういう言葉はいいかどうかは別といたしまして、自分の土地というものを主として考え、そこにあるものはすべて主権に属する、こういう考え方であろうと思いますが、そういう考え方に従っていわゆる出生地主義というものをとっている国、あるいはヨーロッパ大陸ではローマ法の影響を受けて、そうではなくして血統主義をとっている、こういうことがございます。我が国は、もちろん単一民族国家であり、他国との交流がなかったから、国籍についてそのような意識をしたのは最近、明治になってからでございましょうが、我が国は伝統的に血統主義をとっておる、こういうことになっておるわけであります。
 もちろん、この血統主義あるいは生地主義いずれをとりましても、それは純粋に置かれている国はないのでありまして、それぞれそれに調整を加えているということでございましょうが、こういう主義のそもそもの考え方、いかなる者に国籍を取得させるかという主義の違いというものが、この重国籍あるいは無国籍が生まれる原因でありますが、これはそれぞれ主権国家がある限りやむを得ない。しかし、将来問題としては、できる限りそのようなことを少なくするために、あるいは条約により、あるいは統一的な国際間の完全な主義が統一されればこれは解消していくわけでありますが、そういうことに向かっていかなければならないということについては、まだまだそれだけの措置はできておらない、こう考えるわけであります。そこで、今回の国籍法の改正、現在の国籍法もそうでありますが、国籍法を改正いたしましても、このような非常に複雑なというか、そういう調整措置をとらなければならない、こういう事態になったわけであります。
 特に今回の国籍法の改正について、これは血統主義をとる限り、父系血統主義というのは、これはもう当然の原則であり、人類が、だれが考えてもそういう主義をとっているであろうと私は思うわけであります。特に我が国の現在の国籍法は父系血統主義でありまして、それが何か憲法の男女平等とかなんとかに反するのだという意見もありますが、それはそうではないので、父系血統主義によるということが当然のことであり、また、それは何も男女を差別をしたことではなくして、その血統によって、ある生まれた子供をどこの国の国籍に所属させるかという一つの象徴としてやっているだけでありますから、私は、現在の国籍法も別に憲法違反とかそういうことは一切ないと考えておりますが、今回の父母両系主義を採用するということは、これはある意味では非常に進歩的というか、あるいは男女平等というか、そういうことについては賛成でありますが、ただ、それによって非常に大きな国籍上の混乱が起こる、これも事実であります。必ずと言っていいほど、相手国も両系主義をとれば、国際結婚をする限り必ず積極的な競合が起こるわけでありますから、そういう事態が非常に多くなったということから、あるいはこの改正をすれば多くなるということで今回の、それぞれ後からまた触れますが、調整措置が講ぜられるわけであります。
 そこで、やはりこの両系主義をとるということについて、私自身としては、こういうことを言うと非常にあれでございますが、国家というものを考え、あるいは民族というものを考えるときには、やはり父系主義であってしかるべきではなかったかと思います。しかし、よくよく考えてみますと、男女平等の権利を認めなければならないし、またヨーロッパ諸国においても父系血統主義をとる国においても、男女両系主義に最近になって変わってきている。そしてまた、婦人差別撤廃条約を署名をし、今から批准をしなければならないということでありますから、私は、父母両系主義に変えることに反対するわけではございません。そういう意味においては、私は、父母両系主義をとった今回の改正案に賛成をするわけでありますが、ただ問題は、そういうことでありますから、私は、やはり両系主義をとるにいたしましても、国民と国家というものの考え方は基本にずっと据えておいていただきたい。後から、種々の調整措置の中でまた具体的な問題は聞きたいと思いますが、やはりそういう考え方に従って運用すべきじゃないか。やはり国家と国民というものの関係をもう少し厳格に考えていただいて、これはもう御答弁は必要ないわけでありますから、そういう考え方で次から質問させていただきたいと思うわけであります。
 そこで、この父母両系主義を採用いたしますと、今までは生じなかったいわゆる積極的競合が相当生ずると思いますが、まあそういうことは、国際的になっていない日本だと批判されるかわかりませんが、やはり単一民族、単一の国家として純粋に保ってきた我が国において、非常に例外的と考えられておった二重国籍というものが、生まれた
段階において二重国籍者が非常に多くなるのじゃないか、こういうふうに考えられますが、大体その辺の数的な見通しとか、どうなるであろうかということを、資料をお持ちでございましたらお教え願いたいと思います。

○枇杷田政府委員 現行法のもとにおきましては、二重国籍が生ずるというのは、生地主義国において日本人父の嫡出子が生まれるという場合に起こるのが主たる原因になるわけでございます。その点で統計的な数字を見てみますと、生地主義の国で生まれて留保届を出して日本国籍を留保する、したがって生地主義の国との重国籍になるというケースが年間二千八百人ぐらいでございます。今後、それが血統主義によりまして、どちらかの片親の血統によって国籍を取得するということの二重国籍の問題が出てくるわけでございますが、これがどの程度生ずるかというのは実はこれからの問題でございますので、推計するほかはないわけでございますが、ここ三、四年の国際結婚の数字を見てまいりますと、大体年間八千組の国際結婚が行われております。そういうところから、全くの推測でございますけれども、大体年間一万人程度が血統主義によって重国籍者になる。したがいまして、生地主義との関係における数を足しますと、年間一万二千人程度の方が重国籍者として出てくるのではないかというふうに考えておるところでございます。

○森(清)委員 そのような重国籍者について、先ほど最初に申し述べましたとおり、やはり国籍は単一、唯一であるべきであるということから、今回の改正案においても重国籍者については選択制度を設けて、そしてそれを、外面的に見れば、強制をしているという言い方はあれでございますが、いずれかの国籍を選択するように強制をしているわけであります。そういう考え方について、何か国籍は二重であっても構わないんだというふうな意見、あるいは個人があっちへ行ったりこっちへ行ったりすることは完全に自由だという考え方もあるようでございますが、それは先ほども申し上げましたとおり、私は本質に反した議論であると思います。しかし、現実問題として、この選択制度をとったことによってある個人については相当圧迫感を覚えるような方もおると聞いております。
 そこで、まず、この法案においてどのような考え方で選択制度をとっておるかということをお伺いしたいと思います。

○枇杷田政府委員 重国籍を持っておられる方は、いろいろの形態があろうかと思いますけれども、二つの国についていわば五分五分の帰属のあり方というのはごくまれだろうと思いますので、どちらかの国にいわば主たる帰属関係があって、片っ方の方は帰属関係が薄いということになろうかと思います。そういう点に着目いたしまして、諸外国では自国に定住しているかしていないかというようなことによって国籍を失わせるというふうな制度をとっている国もあります。
 我が国におきましては、今度の案ではそういう定住というふうな問題も考慮に入れなかったわけではございませんけれども、一つの生活実態というものが成人に達するまでには決まっていくであろう、どちらかの親あるいはどちらかの国籍の国での生活関係というもので大体子供さんの将来の帰属関係がどちらかということに決まっていくであろう、そういうことを考えまして、その結果に基づいて御本人の意思でどちらかの国の国籍を選ぶということにしてもらって解消したらどうであろうかというふうに考えたわけでございます。その考え方はヨーロッパでもそのような考え方をとられて、ヨーロッパ理事会でも考え出されておるところでございます。その結果、日本の国籍を選択をする、要するに日本の国籍の方を自分のいわば帰属の対象にしたいというふうな意思表示をされた方については、日本の国籍をそのまま認めましょう。そうしますと、外国の方の国籍については、これは外国の法制のことでございますから必ずしもできませんけれども、なるべくそれを法律的にも解消するような努力をしていただくことによって整理をしたいということでございます。
 なお、向こうの外国の方の国籍の離脱もしない、日本の国籍の方も離脱をしない、そうかといって積極的に日本の国籍も選択するということをされない方につきましては、これは法務大臣から催告をいたしましてどちらかを決めてくださいというふうに求めまして、それでもなおかつ何にも応答がないという場合には、これはむしろ日本の国籍についてはまさしく形骸的なものとしかとらえていない方だという推定が働きますので、そういう場合には日本の国籍を喪失するということによって解消する、そういう考え方で選択制度というものを導入することにいたしたわけでございます。

○森(清)委員 そのような選択制度をとり、また我が国の国籍を持っている外国人、いわゆる重国籍者についての対応というものも相当弾力的になりまして、結構なことだと思います。
 それに関連いたしまして、既に現在無国籍になっている方について、経過措置でございますが、特に附則第五条でございますが、これによって、現在の無国籍者で我が国の国籍を取得したいという方についての手続、非常にうまくできていると思います。
 そこで、その附則五条の適用範囲が未成年者に限っておる、成年者はその適用を受けないということについて、どのような考えでそれをそういうふうにされたかということ。
 時間もありませんから、それに関連いたしておりますので一緒にあわせてお伺いいたしますが、沖縄県において何十人とかあるいは百人とかいっておりますが、いわゆる無国籍児でございます。これは法律的にといいますか、アメリカの主義と我が国の血統主義とのはざまにできないわゆる消極的抵触でありまして、このように法律的にどのような実態になっても、それは無国籍になるというものを生ずるわけでございます。父親がアメリカ人であるときに、その父親が一定の居住要件を満たさないときにはアメリカ国籍は子供が取得できないし、日本では、現在の国籍法によれば、父がアメリカ人である限り日本の国籍は取得できない、こういうことでありましたが、もちろんそれは今回の法律によって解消していくわけであります。しかし、法律上当然にそういう無国籍になった者じゃなくして、その他の個人的な理由によって現実に無国籍になっておるという人たち、あるいはそれが我が国の国籍を取得できない状態でずっと続いておるということも現実にはあるわけであります。その辺の実態、今回の法律によって私はもう大部分はこれで解決するものと考えておりますが、そうなっておるかどうか。その点をお答え願いたいと思います。

○枇杷田政府委員 附則の五条で経過措置を定めてございますが、日本人を母とする子で、新法の時代に生まれたならば日本国籍を取得することになるのに旧法時代であるために取得しなかった方をどうするかということが附則の第五条の問題でございますけれども、私どもは、これはできるだけ父母両系主義にした以上は、ある程度さかのぼって、もし本人が希望されるならば日本国籍を与える道を開くべきであろうということから考えまして、実は二十年さかのぼる。昭和四十年の一月一日から以降に生まれた方については、御本人の意思表示によって日本国籍を取得させようということにしたわけでございます。
 もっとさかのぼる期間を長くいたしまして、という御意見もあるわけでございますけれども、私どもといたしますと、もう成年に達しておられる方というのは、日本の国籍がない方として生活実態を長い間持っておられてそれなりの社会生活をしておられるわけでございますので、そういう方について、意思表示により単純に日本国籍を与えるということは適当ではない。そういう生活実態というものを踏まえまして日本国籍を取得したいとおっしゃるならば、帰化手続によって国籍を付与するというのが一番正しいやり方であろう。また諸外国の例を見ましても、そういう父母両系主義を採用することによっての経過措置は最大限二十年という例でございます。大体二十歳までは、国籍がいわば抵触をしたりいろいろなことはいた
しましても 不確定だというような考え方が世界共通にあるわけでございますので、そういう間の方については意思表示だけで日本国籍を与えることにしよう。それを超えておられる方については帰化手続、この場合には簡易帰化手続になりますけれども、そういう生活実態を見ながら日本国籍を取得していただくというのが適当であろうという考え方に立ったものでございます。
 なお、沖縄の関係につきましては、外国人登録の面で見ますと、ことしの二月現在で無国籍の方が沖縄県で四十九名おられます。その中で日本人を母とする無国籍者、これが二十一名おられます。この日本人を母としながら無国籍であるということの理由は、ただいまお話しございましたようなアメリカの国籍法との絡みで、いわばそのはざまに入って父親の国籍であるアメリカの国籍を取得できないということその他の事由によるわけでございますけれども、結局二十一名の方が日本人を母とする子でありながら無国籍であるという状況のようでございます。その中で二十名の方が未成年であります。一人の方が成年に達しておられるようであります。
 その二十名の方は附則の関係で御本人が日本国籍を取得したいということでございますと、届け出によりまして簡単に日本国籍が取得できるわけでございます。残る一人の方についてはそういうことができないということになりますけれども、これは日本人を母とするわけでございますから、簡易帰化手続によりまして、申請があればよっぽど特段のことでもない限りは日本国籍が取得できるわけでございます。現在でも、現行法のもとにおきましてもそれらの方々は帰化申請によりまして日本国籍を取得することができるわけでございます。ちょっと余談になりますけれども、既にここ三年の間に十五人の方が帰化申請によりまして日本国籍を取得しておられます。そういうことで年々問題の無国籍児の方の数が減っておるわけでございます。
 なお、沖縄の関係につきましては、いろいろな特別な事情のもとにそういう無国籍のままに置かれておるわけでございますので、もし帰化の申請がございました場合には、できるだけそういう点を考慮した上で簡易に帰化ができるような配慮をしてまいりたいと考えておるところでございます。

○森(清)委員 終わります。

○宮崎委員長 稲葉誠一君。

○稲葉(誠)委員 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案について第一回目の質問をいたします。
 この法案につきましては、大変法務省当局が御苦労をされたことは私もよく存じておりまして、その点については敬意を表する次第でございます。ただ、ただすべき点はしっかりただすことが必要だろう、そういうことでお聞きをするわけでございます。
 私がまずきょうお聞きしたいと思いますことは、主として憲法とこの国籍法の改正の関係なんですが、その前にお聞きをいたしたいのは、中間試案が出ましたね。中間試案と要綱との間に相当違いがあるわけだと思いますが、これは違いがあってもいいわけですね、中間試案はたたき台として恐らく出したのでしょうから、それに対して各方面の意見を聞いて要綱をつくられたと思うのですが、どういうところが違うようになったのか、どういう経過で違うようになったのかということをまず御説明をお願いいたしたいというふうに考えるわけです。

○枇杷田政府委員 まず、準正による国籍の取得の関係でございます。これは法律案の第三条に該当する部分でございますが、これは認知者の親権に服しておるということが要件というふうに中間試案ではしておりましたけれども、それを最終の案では不要ということにいたしまして、親権に服しているという条件は外しております。
 それから、帰化の関係におきまして、生計条件の関係について父母の一方が備えていればよいということにしていたのをもう少し広げまして、いわば世帯単位で生計条件を考えるというふうにした点が変わっております。
 それから、重国籍の防止条件におきまして、これは帰化の重国籍防止条件でございますが、これは日本国民の未成年の子についてのみ重国籍防止条件を外すということにしておりましたのを新たに一般的な条項に広げまして、いわば難民その他につきましても重国籍の防止条件を緩和するというふうなことにいたしております。
 それから、配偶者の帰化条件につきまして、試案では三年の居住要件に一年の婚姻継続条件を加えることにしておりましたのを、これは外したわけでございます。これは現行よりも重くなるということがございますので外したということでございましょう。
 それから、無国籍者の簡易帰化、これが新しい条文で八条の四号になろうかと思いますが、これを新設いたしました。これは無国籍が発生するのをなるべく防止しようという観点からつけ加えたものでございます。
 それから、国籍の留保制度でございますけれども、これは中間試案の段階では留保制度は廃止する実とそれから拡張する案と併記いたしておりました。結果といたしますと、後に申し上げます選択制度についての考え方を少し変えましたので、それもあわせて拡張論の方を採用したということでございます。
 それから、選択制度でございます。これは新しい法律案の十四条から十六条までに関するところでございますが、中間試案におきましては一定の期限内に日本国籍を選択する旨の宣言をしない方は当然に日本国籍を喪失するということにいたしておったわけでございますけれども、それを法務大臣の催告によって、なおかつその催告にも何らの応答がないという方について喪失をするというふうに手続を一段階加えまして、これは本人にいわば熟慮の機会を与えるといいますか手続的な保障を与えるという意味でございます。
 それから、いわゆる喪失宣告の点でございますけれども、日本国籍を選択する宣言をした人が外国の公務等についたという場合に、中間試案では当然喪失ということにしておったわけでございますが、これにつきましては法務大臣の認定手続にかからせまして要件をさらに厳格にしたという点が変わっております。
 そのほか、帰化の取り消し制度は今度は取り入れないというふうにしたところが本則では違っておるわけでございます。
 それから、経過措置におきましては、先ほど準正のところで申し上げたと同様に、親権者の親権に服しておるということを外すということにいたしたわけでございます。
 これは中間試案を公表いたしまして各界からいろいろ御意見が出てまいりました。そういうものを最大限に尊重し、審議会において検討した結果そのようになった次第でございます。

○稲葉(誠)委員 じゃ、今の要綱と今度の法案とで違っている点ほどこがあるわけですか。

○枇杷田政府委員 要綱と法案とは全く同じ趣旨で、若干字句の違いはございますけれども、同じ考え方でつくられておると思います。

○稲葉(誠)委員 いや、考え方は同じかもわかりませんけれども、字句が違うでしょう。外国の公務員になった場合、何とかに努めなければならないというあれが入っているのじゃないですか。それはどういう経過でしょうか。

○枇杷田政府委員 法案の第十六条第一項に、日本の国籍の選択の宣言をした者は「外国の国籍の離脱に努めなければならない。」というのが入っておりますが、これは要綱にはそのような文章といいますか、文言はございませんけれども、選択の宣言の趣旨、その中身を明らかにするということが条文の上では明確になるであろうということから、いわば訓示的な表現でございますけれども、そのような一項が加えられておるところが変わっていると言えば変わっているところでございます。

○稲葉(誠)委員 訓示的規定ですから、問題とし
                      
てそう大きな問題ではありませんが……。
 そこで、今お話のありました中間試案、これは民事局の五課が出したものと、その前に新聞記者の人に対してこういう中間試案を出しますよと言ってブリーフィングしましたときに出したものとあるわけですが、それとこの発表された中間試案とは違っていますね。

○枇杷田政府委員 新聞記者の方々に発表したときには、まだ部会で決まっていない空白部分がありまして、その空白部分のままでお話をして、その後部会で決まったところを埋めたものが中間試案だという経過のようでございます。

○稲葉(誠)委員 だから、新聞記者に配ったものとこの中間試案、発表になったものとどこが違いますか。

○枇杷田政府委員 留保の点についてだと思いますが、新聞記者に別に公表したわけではなくて、これから中間試案を発表するについて事前に内容を理解してもらおうということで話をしたということでございます。その内容とすれば、留保のところがはっきりまだ決まっていなかったので、その点が少し抜けておったというふうに聞いております。

○稲葉(誠)委員 そうじゃないのじゃないですか。この文章がありますね。「第一 出生による国籍の取得」というところが一番最初でしょう。そのところで、読んでみますと、「我が国が昭和五十五年七月に署名した「婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准するために妥当な措置であると考えられること、憲法における両性平等の見地から適当とする考え方」こうありますね。この「憲法における両性平等の見地から適当とする考え方」こういうのは新聞記者に配ったものには入ってなかったのじゃないですか。

○枇杷田政府委員 その点は新聞記者に発表したときには――発表といいますか、説明したときには入っていなかったようでありますが、後でそういうふうな考え方も改正の動機としてはあるだろうということではっきりさせた方がいいという内部意見がございまして、それでそういうふうにつけ加えて整理をして中間試案としたという経緯のようでございます。

○稲葉(誠)委員 「憲法における両性平等の見地から適当とする考え方」この考え方は、今おっしゃったとおり、新聞記者に配ったものの中には入っていないわけです。後から内部からの意見ということでしたけれども、法務省の意見じゃないですね。法制審議会の中のある教授が非常に強調された御意見です。お名前を申し上げてもいいですけれども、今、上智大学の教授佐藤功先生が主張された御意見です。
 そこで、国籍法のこの問題、今度父母両系主義をとることについて、この「憲法における両性平等の見地から適当とする考え方」をなぜあなたの方で抜こうとするのか。それはそこまで考えていたわけじゃないのだということがあるかもわかりませんけれども、いろいろ関係してくるわけです。どこに問題があるかということはもうおわかりだと思います。一つは、経過規定に関係しできます。もう一つは、現在問題となっておる案件にも関係しできますから、その点はちょっとあるかもわかりませんけれども、いずれにしても、憲法との関係の問題をあなたの方としては、何か父母両系主義という問題で関係を非常に薄くしよう、薄くしようと考えておられるように私には思えるわけです。
 そこで、問題は憲法と国籍法との関係になってくるわけです。これを今言ったようにきちんとして考えますと、経過規定が憲法施行時にさかのぽるということになってくることも一つ考えられてくると私は思うのです。それが必然的に結びつくかどうかということについては、あなたの方では恐らくドイツの基本法なり何なりを出してこられるというふうにも思うのです。
 そこで、これからいろいろ御質問するのですが、その前に、ちょっと気がついたのですけれども、条約の名前について、これは署名してまだ批准していませんけれども、「我が国が署名した女子に対する差別の撤廃に関する条約」こういうふうに提案理由説明では短くなってしまっています。しかし、撤廃条約の問題は、ちゃんとした条約ですからきちんとした名前をくっつけなければいけません。そのときに、これは言葉といえば言葉ですけれども、あなた方はずっと、これは外務省でもそうですし、公の名前は「婦人に対するあらゆる形態の差別」という形で「婦人」という言葉を使っているのじゃないですか。ここで「女子」という言葉を急に使われたのは何か特別に意味があるのですか、これはどういうわけですか。

○枇杷田政府委員 従来、婦人差別撤廃条約というふうに言われておりまして、「婦人」という言葉を使っておったのでありますが、これは外務省国連局の仮訳が「婦人」という言葉を使っておるわけでございまして、今後、批准に向けまして正式の訳ができることになるわけで、その場合にどうなるかはその時点でないとわかりませんが、現在は外務省は、私も責任を持って申し上げられないのですけれども、何と申しますか、「婦人」というのは、小さい子供さんなんかを「婦人」というのには適当でないというようなニュアンスがあるのかと思いますけれども、一般的な女性という意味をあらわす言葉としては「女子」の方がいいのではないか、そういう考えでおられるようでございますので、私の方でもそこは、ちょっと余談でございますけれども、その条約を特定するのに正式の名称がまだないということのために、「昭和五十五年七月十七日に我が国が署名した」ということをつけて特定を補完するということをしておるわけでございまして、私どもの方で何か意図があって「婦人」を「女子」にしたということではございませんので、御了承いただきたいと思います。

○稲葉(誠)委員 いや、私、提案理由を聞いていまして今ちょっと気がついたものですから、それで聞いたわけです。いずれ批准のときには正式な条約名が出るわけですから、そのときにどういうふうになりますか、これはまた外務省関係などでやるべきことだというふうに私は思っています。
 そこで、この前のというか現行の国籍法ができたときに、提案理由は昭和二十五年四月四日に衆議院法務委員会で行われているわけですが、その中で、二十五年当時ですから「新憲法及び改正民法」という言葉を使っていますけれども、そうすると、憲法の「趣旨に沿わない規定が含まれておりますので、これを改める必要があるのでありますが」と、こういうふうに言っておるわけですね。現行国籍法の提案理由ですよ。そうすると、そのときに憲法にそぐわない、沿わない規定というふうに考えられておったのはどういう点が考えられておったのでしょうか。民法の点はいいですよ、これは。

○枇杷田政府委員 旧国籍法ということになりますけれども、その場合には家族制度的な発想のもとに夫婦国籍同一主義、親子国籍同一主義ということで、家全体が一つの国籍でというふうな思想が背後にあって、そのために、主として夫婦国籍同一主義の結果、外国人が日本人の妻になった場合には日本国籍を取得するし、外国人の妻に日本人がなった場合にも向こうの方で国籍を取得するならば国籍を取得するとか、そういうような関係が、家制度と申しますか、そういうふうな考え方と結びついているところが問題だというふうにとらえられていたのではないかというふうに思います。

○稲葉(誠)委員 それは、何といいますか、全体を展望して一つにまとめられたわけですけれども、いろいろ分けているわけでしょう。それを今ここで細かく聞くわけじゃありませんけれども、それを見たときに、こういうふうに言っているわけですね。
 「第一に現行では、国籍を離脱することができる場合を狭く限定し、かつ国籍の離脱に伴って法務総裁の許可を必要とする場合があるのでありますが、これは国籍離脱の自由を保障した憲法第二十二条第二項の規定に抵触」する、こういうことが第一ですね。規定に抵触するという書き方をしているところと、それから第三のところで、今
おっしゃったような、「現行法は、国籍の取得についても、また喪失についても、妻は夫の国籍に従うという原則及び子は父または母の国籍に従うという原則を採用しており」云々ということを言っておって、これは途中省略しますが、「憲法第二十四条の精神と合致いたしませんので」と、こういうふうに言っておるわけですね。
 それから第四のところで、これは帰化人の場合ですが、「帰化人等に対しましては」――帰化人という言葉がどうもあるのかどうかよくわかりませんが、「国務大臣その他国家の重要な官職につく資格を制限いたしておりますが、これは、国民はすべて法の下において平等であることを宣言した憲法第十四条の精神に反しますので」と、こう言っておるわけですね。
 そうすると、規定に抵触するというのと、それから二十四条の精神と合致しないというのと、憲法十四条の精神に反しますという、この三つをこのときに使い分けているわけですよ、憲法との関係で。これはどういうふうな理由からこういう使い分けが行われるようになったのでしょうか。もちろん、第一の場合は内容の関係から来る点がありますけれども、どうなんでしょうか。

○枇杷田政府委員 第一の離脱についての関係につきましては、二重国籍である限り離脱が自由であるという原則でございますので、それを法務総裁の許可にかからしめるということになりますと、これは明らかに憲法に抵触するわけでございます。
 後のいわば家制度との絡みの関係につきましては、そのこと自体が憲法に真正面から当たるわけではないのだけれども、憲法で考えている事柄、それで、よって民法も改正したわけでございますけれども、そういうふうな精神の一環としますと、家を中心とした国籍の考え方というものがそぐわないという意味だろうと思います。
 帰化人といいますか、帰化をされた日本人につきましても、これは日本国民である以上法のもとの平等ということに反する、憲法の条文そのものに、離脱ほど明確に直接ではありませんけれども、平等ということの意味合いからそれに抵触するというふうなことで、三つのニュアンスが少しずつ違えられて説明がなされたのではなかろうかと思います。

○稲葉(誠)委員 そこで、このときに父系主義をとったわけですね。父系主義をとったのは、そのときの国際情勢でほかの国、ヨーロッパでもまだ大体両系主義をとった国はほとんどなかったというふうなことやなんかを含めてそういうようなことをとったというふうに説明されているわけですけれども、そこで私の考えておる疑問は、父系主義をとるということがこの提案理由の中ではこういうふうに説明されているのです。これは局長は村上さんですね。「父系主義を採ることは、父としての権利或いは母としての権利に差別を設けるということを意味するのではないのであります。男女の本質的平等という憲法の趣旨に反するものではないと考えるのであります。」と、こういうふうに言っているわけですね。
 これについてはこれからお聞きをいたしますけれども、そうすると、あなたの方では、どういう場合に男女の本質的平等という憲法の精神に反するのだ、こういうふうにお考えなんでしょうか。

○枇杷田政府委員 例えば生まれた子供が男の子であれば日本国籍を取得するとか、女の子だったらば取得しないとかというふうな、これは極端な話ですけれども、そういう場合には明らかに憲法に抵触するだろうと思います、子供中心に見た場合。
 それから、妻の関係が、何といいますか、夫の場合と妻の場合と、外国人と婚姻した場合に明らかに差異を設けるとかいうふうなことになりますと抵触するということが言えようかと思いますが、父系主義が抵触するということは、ここで言っているとおり、ないのではないかというふうに考えております。

○稲葉(誠)委員 生まれた子供が男だったら日本人で女だったらどうだ、そんなの、それは香川さんが答弁しているのだ。知っているでしょう。それはちょっと何というか、答弁としても極めて不適当な答弁ですよ。昭和五十四年四月二十六日、衆議院外務委員会での答弁ですね。私は外務委員じゃないからいなかったからあれですけれども、その答弁はちょっとあれだと思います。
 そこで、今言われたようなことで、提案理由の説明の中にあったのが私が今読んだところですね。これも意味がよくわからないのですよ。「父系主義を採ることは、父としての権利或いは母としての権利に差別を設けるということを意味するのではないのであります。」という意味がよくわからないのだ。ここに書いてあることが意味がよくわからないですね。
 それから、もう一つ、香川さんが答弁しているのは、今あなたがおっしゃったような、「日本人男の子供として生まれたそれが男性であれば、男の子であれば日本国籍を与えて、女の子であれば日本国籍を与えないというふうなことであれば、これは完全に男女平等の原則に違反することだろうと思うのでありますがこと、こんなことを答弁すると、これは問題の答弁だと思いますが、「生まれた子供の国籍を決める基準として父系主義をとっておるということは、これは男女平等の原則のらち外の問題ではなかろうかというふうに考えるわけであります。」と、こう言っているのですね。この「生まれた子供の国籍を決める基準として父系主義をとっておる」のだ、それから、今の村上さんが提案理由の説明のときに言った「父系主義を採ることは、父としての権利或いは母としての権利に差別を設けるということを意味するのではないのであります。」という、これとの、同じことを言っているのかもわかりませんけれども、これは一体どういうことを言っているのか、かみ砕いて言ってもらわないと、難しくてわからないのです。
 それと、私が言ったように、中間試案の中で、憲法における両性平等の見地から今度の両系主義を適当とするという考え方が出てきておるわけでしょう。それと一体どういうふうに関係をするのか、そこがよくわからないのですけれども、今までの答弁が非常に簡単過ぎるのですよ。簡単過ぎてわからないのです。だから、かみ砕いて、素人にもわかるようによく説明していただきたいと思うのですよ。

○枇杷田政府委員 私、二十五年制定当時の説明を十分に御説明できるかどうか自信がございませんけれども、そんたくいたしますのに、親に国籍の承継権というふうなものがあるという考え方をとりますと、父親である男の方には承継権があり、女の方には承継権がないということになりますと、これは男女平等の問題になるかもしれないけれども、国籍というのは親の承継権の問題としてとらえるべき問題ではないのであって、国がどういう場合にどういう子供に与えるかということなんで、親の権利ではないという考え方をそこで述べておるのではなかろうかというふうに思います。

○稲葉(誠)委員 それだけではこれはわからないですね。この文章とは何か結びつかないのではないですか。意味がわからない。もう少し詳しく、かみ砕いて言ってもらわないとわからないのです。大臣わかりますか、僕はわからないですよ。ここのところは確かに難しいところなんですよ。一番難しいところなんだけれども、実に簡単に、一行か二行でみんな言ってしまっているんです。だから、わからないんです。もう少しわかるように説明していただきたい。あなたの方としては、またそれを説明すると、さあこれは経過規定を直さなければいけないのではないかということを考えておられるのかもわかりませんけれども、それからまたあれが今まで法的安定性を伴って父系主義をとってずっとやってきたのを覆されるのではないかということを心配されておられるのかわかりませんけれども、それはそれとして、とにかくここのところがわからないんですよ。私には意味がよくわからない。
 だから、もう少し、なぜ父系主義をとって、その当時ほかの国はそういう主義だった国が多いこと
はわかるのですが、それが両性の平等との関連において一体どういう意味を持っているのかということですね。この村上さんの提案理由も二行ぐらいたし、香川さんの説明も舌足らずのような説明でよくわからないのですよ。ここのところをかみ砕いてわかるように説明願えませんか。

○枇杷田政府委員 かみ砕いたことになるかどうかわかりませんけれども、国籍を出生を契機として与えるという場合に生地主義あるいは血統主義というものがあるわけでございますが、これは生地主義をとるということも国際的には認められている原則でございますし、血統も認められているところでございますが、それはどちらをとってもいいわけで、したがって親の権利というふうに国籍の取得の原因を考えられていないということが一つ言えようかと思います。
 それで、血統主義をとるところにおきましては何か親が子に伝えるというふうなニュアンスがあるようでございますけれども、別に相続のような関係でくるわけではございませんので、国が一つの基準として血統というものでとらえているだけであって、したがって、その場合に両親が日本人であるという場合だとか、あるいは父が日本人である場合とか母が日本人であるとかいう場合、それを基準としてどうとらえるかというだけのことであって、いわば相続的な、子供の方から見れば相続というふうなことでもないし、それから親の方からすれば、自分の国籍を子に伝えるという権利を国が認めたという形のものではないので、国籍というものはどういう条件のもとにどういう基準で与えるかということを決める、その決める基準として血統をとり、父の血統をとったというだけのことであるから、したがって、そこでは父の権利とか母の権利とかいうものが出てくるものではない。したがって、権利という面について男女を差別したものではないというのが二十五年当時の改正のときの説明であろうかと思いますし、現在でも私どもはそういうふうな考え方をとっておるわけでございます。

○稲葉(誠)委員 そうすると、「自由と正義」の一九八一年十月号、「国籍法の現代的課題」の中で田中課長が書いておられるわけですけれども、「父母両系血統主義採用に関する問題点」の第一に、「現行国籍法は血統主義を採用しているが、憲法上は生地主義を採用することも許されるところと思われる。」ということを書いておられるのですね。
 私はこれを読んだときに、率直な話、私どもは日本の国籍法というのは血統主義をとるのが当然というか当たり前の原理というふうに、意識的にといいますか、受けとめておったわけですね。そこへ憲法で生地主義もとれるということが第一の問題点として挙げられているわけですね。私はこれを見たとき、どうも何だかちょっと一種の違和感みたいなものを持ったのですが、日本の憲法でもそれは生地主義をとれるということなんですが、それを特に第一に、一番最初の問題点として挙げた意味はどういう意味があるのですか。

○枇杷田政府委員 当時の課長が私見を述べたのでございますけれども、憲法では国籍については法律で定めるということにしておるだけでございます。世界的に見ますと、国籍を与える場合の基準としては、大きく分けると生地主義と血統主義がある。したがって、憲法で法律で定めると書いてある以上、形式的には日本においても生地主義を採用するということが別に憲法に抵触するわけではないという意味では考えられる範囲には入っておるという意味でございまして、それが日本としては非常に違和感があって、とても思いつくようなところにある主義ではないというふうなこととはまた別の、形式的なことを述べたものだと思っております。

○稲葉(誠)委員 これは一番最初に出てくるものですから、純粋な形式的法律論としてはこういう書き方が一番最初に出てくるのも、順序から言えばあるいは正しいかもしれませんけれども、いきなりこういうものが出てくるものだから、何だか変だなという感じを受けたのです。
 そこで、私が疑問に思いますことは、父母両系主義を今度は採用する、そうすると、例えばドイツの基本法の場合に、父系主義をとっていたわけでしょう。その父系主義が憲法違反だというふうにされて、ドイツの基本法なり国籍法というものは変わってくるわけですね。まずそういうことは事実かどうかということが第一ですね。
 それから、ではドイツがそういうふうになっているのに日本ではどうして父系主義に対して憲法違反ということの論議がそれほど具体化しなかったのだろうか、こういうことですね、私の疑問は。そこら辺はどういうふうになっているのでしょうか。

○枇杷田政府委員 西ドイツにおきましては、ただいまお話がございましたように、基本法に反する、あるいは憲法裁判所でそういう判断がなされて、それを受けて法改正がなされたわけでございますが、日本におきましては、二十五年の制定当時、国会でもその点についての議論は若干あったようでございますけれども、その後、学界におきましても一般におきましても、余り憲法議論というものがなされないままで来て、そして昭和五十年代に入りまして若干そういうことを命ずる判決が出て、その一審の判決が出るころから、学界の方でも関心を持ち出して、議論がされるようになったということでございますが、主に、私どもの考えとすれば、先ほど申しましたように、国籍を付与する場合の基準としてとっただけであって、男女を差別するというものではないという意識がやはり一般にあったのではなかろうかという気がいたします。それと同時に、そういうことが具体化して問題になるような国際結婚の傾向がなかったので、余り具体的な問題として意識されなかったということも一つの理由がと思います。
 それと同時に、従来、どちらかといいますと、一つの生活実態としては父、夫を中心とする生活実態がある。したがって、父親の方の国籍といいますか、そういうふうな団体の方に属しやすいという傾向があったのが最近そうではなくなってきて、母親とのつながりで日本国内で生活をするとかいうようなことがいろいろ出てきたりして、そこで最近になって問題意識が出てきたというのが違うところではないかという気がいたします。

○稲葉(誠)委員 今のドイツの憲法違反の判例、それから、それがドイツの場合に改正された経過、これは何もここでゼミナールをやるわけじゃありませんからあれかもわかりませんけれども、それが関連してくるのですよ。どこに関連するかということはおわかりだと思うのですが、だから、私はお聞きするわけです。ちょっとその経過――ドイツの基本法三条一項二号ですか、それと百十七条、それとの関連、それと一九六三年の改正の問題、それから一九七四年の連邦憲法裁判所の判決の問題、ここら辺のところを御説明をお願いいたしたい、こういうふうに考えます。

○枇杷田政府委員 西ドイツでは一九七五年一月一日施行の改正法が施行されたわけでございますけれども、この経過措置で一九五三年四月一日以降の出生者を対象として西ドイツ国籍を認めるという措置がとられたわけでございます。この一九五三年四月一日というのは、西ドイツ基本法の両性平等の規定が効力を生ずる日でございますので、したがって、その憲法といいますか基本法の規定に合わせて遡及したという感じがそこでは出てくるわけでございます。
 また、西ドイツの憲法裁判所の一九七四年五月二十一日の判決では基本法違反を明らかにしておりますので、従前の父系主義を基本法違反と判断したことを前提とする経過措置であるというふうに考えられるわけでございますが、しかしながら西ドイツの改正法の理由書によりますと、未成年者が国籍取得の表明をする権利、取得の権利を制限することは本質的に合法的なものである。ドイツ帰化法はドイツ国籍を申請する可能性を十六歳以上の者に与えておりまして、ドイツ人を母に持つ成年に達した者はこの間に帰化済みであるとして、基本法違反であるかどうかの関係については理由書では全く言及をしていないということでご
ざいます。したがって、成人の関係で遡及をしたのか基本法との関係で遡及することにしたのかということは理由書の限りでは明らかではないのでございます。
 ただ、結果的には基本法の効力が生じた日までさかのぼってドイツ人を母親とする子供についての国籍取得権を与えたということになることは間違いないわけでございますが、どういう考え方でその日にしたかということは理由書の上では明記されておらないということでございます。

○稲葉(誠)委員 私、疑問に思いますことは、ドイツの場合、結局一九五三年四月一日ですか、憲法施行のときにさかのぼるわけですね。これは今お話がありましたように、三条一項二号ですか、あそこのところでは男女平等の規定があって、それが百十七条で施行の日が違うわけですね。これも私よくわからないのですけれども、なぜ施行の日が――三月三十一日までは効力を及ぼさないとか百十七条で書いてあるわけでしょう。どういうわけでああいう書き方をしておるのか。大学のゼミナールみたいになって恐縮ですけれども、どういう理由によってそういうふうになったのでしょうか。

○枇杷田政府委員 私ども、関係はどうもよくわからないのでございますけれども、法律整備のいろいろな手続とか順番とかそういうことでじゃないかと想像しておりますが、はっきりしたことは残念ながらわかりません。

○稲葉(誠)委員 私の疑問は二つあるのですよ。
 一つは、日本とドイツを比べたときに、国民性も違うし、いろいろ伝統も違う、憲法裁判のやり方も違う。向こうは憲法裁判所があるとか、いろいろ違いますね。それはわかりますが、ドイツでは憲法施行のときにさかのぼっているわけですよ。それならば日本の国籍法も憲法施行のときにさかのぼったらいいのではないか、私はこういうふうに考えるわけです。それを佐藤功さんは恐らく言っておられるのじゃないかと思うのです、個人の先生の名前を出しては恐縮ですけれども。そういうふうに私は考えるのですけれども、それが一点です。
 それから、今この二つの事件、昭和五十二年行ウ三百六十号と五十三年行ウ百七十五号、これは一審は五十六年三月三十日の判決ですけれども、これが上告されているわけですね。これでもし父系主義が憲法違反だという判決が出たときに一体どうするのですか。それは最高裁の裁判に法務省が関与したり国会が関与すべきじゃありませんから、こういう質問は仮定の質問としても適当でないということは私もわかっているのですけれども、ちょっと気になるのです。なったとき一体どうなるんだろう。この法案でいいんだろうか、この法案をまた直さなければいけないんじゃないか、こういう気がするのです。
 問題は二つですね。ドイツの関係と、それから今の関係が出たときにこの法案は一体どういう運命をたどるんだろうか、こういうことですね。そこら辺はどうでしょう。これはもちろん最高裁の裁判に影響を与えないような形でしゃべっていただきたいのですが。

○枇杷田政府委員 経過措置でいつまでさかのぼるかということについては、法制審議会でもいろいろ議論のあったところでございます。これは公表されておりますので申し上げていいかと思いますけれども、弁護士会の方から、さかのぼってはどうだろうかというふうな形での御意見が実は出されまして、それを中心に最終的には議論があったわけでございますけれども、法制審議会の国籍法部会でも総会でも、憲法の問題で考える必要はない、憲法のときまでさかのぼる必要はないということで、弁護士会関係以外の方はそういう御意見でございました。その中には、ただいまおっしゃった委員の方も御出席になっておられます。
 それで、私どもといたしますと、これは憲法に違反するものではないという考え方でございますので、国籍法の考え方でどこまでさかのぼって認めるのが適当かという問題としてとらえたわけでございます。その際に、先ほども森委員の御質問に対してお答えしたとおり、未成年者であるということで、二十年を基準にとるということが適当であろうというふうに考えたわけでございます。
 なお、これは余談でございますけれども、憲法違反だというふうに考えて憲法の時点までさかのぼるべきか否かということの判断につきましては、過般、九十三国会に土井たか子議員ほかの方が御提案になりました法案の経過措置も参考にさせていただいております。
 それから、最高裁でもし憲法違反であるという判決が出たらどうかということでございますけれども、もし、そういう場合に中身がどうかでございまして、二審の判決で触れていたかと思いますけれども、現在は父系血統主義をとっているわけでございますので、そこに、今度の改正案と同じように、父または母というふうに読み込んで、そして日本国籍を与えるというふうに読むべきである、そういうようなものがあるんだという形で判断がなされれば、それはそれでいってしまうことになろうかと思いますけれども、そういうことが仮に欠けていることが問題であるという形で御指摘になるのですと、これはまた扱いが違うことになろうかと思いますので、どのような判決になるかわかりませんけれども、もし仮に違憲であるという場合には、その中身によりましてまた判断するほかはないと思います。いずれにしましても、私どもとしては、現在の経過措置でどんな判決が出ても混乱が生ずることはないというふうに思っております。

○稲葉(誠)委員 そのままの形にすると、ドイツの場合はこうなるわけでしょう、一九五三年だから三十年というか三十歳かな。やっぱり二十ですか、同じになるわけですか、ちょっと僕の勘違いかもわかりませんけれども。じゃあ今の点はまた後で研究させていただきます。
 一審の判決を見ると、これは一審の判決ですから確定したわけじゃありませんけれども、結局「国籍法二条一号ないし三号の規定は、出生による日本国籍の取得につき父母のいずれが日本人であるかによって差別を設けるのであるがここう言っているのですね。差別を設けるものであるけれども、こうこうこういう理由、例えば簡易帰化の問題であるとかなんとかということで憲法違反ではないということを言っているわけでしょう。そうすると、これはあなたの方としても、国籍法二条一号ないし三号の規定は、出生による日本国籍の取得につき父母のいずれが日本人であるかによって差別を設けるものであるというふうに考えるわけですか、いやそういうふうには考えない、こういうことですか。

○枇杷田政府委員 私どもとしては、差別として考えるという立場はとっておりません。ただ、そのような考え方が一審裁判所でもあった、またそういう考え方を支持するような学説もかなりあるというふうなことは、改正の場合に考慮に入れるべきであろうということは考えております。それがあの中間試案のときの前文に出ている気持ちだろうと思います。

○稲葉(誠)委員 中間試案の前文に出ている。じゃあそれが条文の中にどういうふうに出てきたわけですか。別に中間試案の前文にそういうふうに書いたとしても、憲法のあれ云々と書いてあったとしても、条文そのものとしては前と同じことなんじゃないですか。

○枇杷田政府委員 それは、現行の父系血統主義を父母両系主義に改めるということが正しい――正しいというか、そう改正すべきだという考えの根拠にそういうことがあるということでございます。

○稲葉(誠)委員 どうも憲法との関係が必ずしも明白ではないわけですね。明白でないという理由は、前から質問しておりますように、あなた方の方としてはやはり法的安定性を保ちたいという考え方が非常に強いのではないかと私は思うのです。それが一つと、それから、経過規定で憲法施行時までさかのぼらすということになると、法案を変えなければなりませんから、そういう考え方があってそういうことを言っておられるのではない
か、こういうふうに考えておるのですが……。
 そこで、具体的ないろいろな問題がたくさんあるわけですから、それらの問題に入らせていただきたいと思うのです。また、今質問したことでの答えなどが不十分であり、あるいは私の質問自身が不十分であるというようなことにつきましては、また別な機会がありますから、そこで質問させていただきたい、こういうふうに考えております。
 まず、無国籍の問題について一応お聞きしたいと思うのですが、現在無国籍の人というのは日本にどのくらいいるわけですか。この前、一番多いときに五千人くらいいたということになっていたのですね。今でも二千何百人おるというふうになっておるのですが、その具体的な数字と、その内訳といいますかジャンルというか、そういうふうなものはどういうふうに見たらよろしいのでしょうか。

○枇杷田政府委員 今日本国内に、昨年の九月末日現在で千九百四十七名の無国籍者がいる、これは法務省の入国管理局の外人登録をもとにした調べでございますが、そういう数字になっております。
 この内訳がどのようになっておるかということははっきりつかまえておりませんけれども、非常に無国籍者がふえたのが、実は日中の国交正常化の際に、在日の中国人の方が自分の意思によりまして中国籍を離脱されまして無国籍になったということで、外人登録上の届け出をされてそのようになった方が多いというふうに聞いております。
 もちろんそのほかに、沖縄で問題になっておりますような形での国籍法の抵触の問題から、国籍を持っておらない方もかなりおられるかと思いますが、その実態は残念ながら私どもの方ではつかんでおらないのでございます。

○稲葉(誠)委員 きょうは憲法との関係でずっと聞いているわけですけれども、そうすると、今の無国籍の方の問題は、この国籍法の改正案が通ったということによって解決できるのですか、できないのですか。できる部分とできない部分とあるということなんですか。それはどういうことなんですか。

○枇杷田政府委員 その無国籍の方の中に、母親が日本人であるのに、現在父系主義をとっておるために、今その子供さんが無国籍になっておられるという方は、二十歳未満である限りは御本人の意思で解消することができます。それからまた、将来はそういう形での無国籍児が出てくるということは防げるわけでございますけれども、自分の意思で自分の国の国籍を失われたような方につきましては、今度の国籍法の改正によっても対処できないわけでございますが、ただ、帰化が従来よりは少し緩やかになるという面がございます、生計要件の緩和等がございますので。そういう面で、帰化の申請によって解消するということは現行法よりは少し広がる可能性があろうと思います。現に、先ほどおっしゃいました五千人とか六千人とか言われていた無国籍の方が現在二千人を切っておりますのは、そういう方々の大部分が帰化によって日本国籍を取得しておられるという結果だろうと思いますので、そういう面が少し促進されるかもしれないという気はしております。

○稲葉(誠)委員 何かこの法案が通るとまるで無国籍の問題がすべて解決するような、という説明はしてないのでしょうけれども、そういうふうに一応とっている人もいるのじゃないか、こう思うものですから私は今お聞きしたわけです。
 それから、国籍法の改正につきましては基本的な問題がまだたくさんあるわけですね。その問題については午後、本会議が終わってからまたお聞きいたしますけれども、同時に、六日に参考人の方がおいでになりますから、その参考人の方の御意見を十分お聞きいたしまして、それからまた質問をさせていただきたいと考えておるわけでございます。
 きょうの午前中の質問はこれで終わります。

○宮崎委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二十六分開議

○宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。稲葉誠一君。

○稲葉(誠)委員 午前中に引き続きますが、無国籍児に関する問題点というところで一つよくわからない点があるものですから教えていただきたいのですが、それはさっき引用いたしました「自由と正義」五十六年の十月号ですか、「国籍法の現代的課題」の中で、当時の五課長が書いておられるものの中にあるのですが、三十三ページの中段ですね。最後のところですが、「我が国でも、国内出生の無国籍児すべてに出生時に日本国籍を付与することは問題であるが、更に、父母がともに国籍を有しない場合の出生児に日本国籍を付与するとの規定も、国籍の実務上は、帰化申請を予定して外国国籍を離脱した親の子について適用されるか、無国籍でないのに国籍証明が不十分なために外国人登録の取扱い上無国籍となっている親の子について適用される(これは誤りである。)例が殆どであり、規定の当否についても問題がある。」こういうふうに言われているのですね。
 ここがよくわからないのですよ。これは誤りであるというところを中心として御説明願いたい、こう思うのですが。

○枇杷田政府委員 これは外国人登録の上で無国籍というふうに書かれておりますけれども、実体的にはどこかの国籍があるというふうに判断されるという意味で間違いであるというような書き方であろうと思います。

○稲葉(誠)委員 外国人登録の場合は日本人でない者は外国人なわけでしょう。外国人の中に無国籍も含まれるわけでしょう。そうすると、別にこれは誤りじゃないじゃないですか。よくわからないのですが……。

○枇杷田政府委員 日本国籍を有しないという意味では外国人でございまして、したがって外国人登録をすること自体は間違いではないわけでございますが、その外国人登録をする場合に国籍を書くということになっております。そういう意味で、外国の国籍を実体的には持っていると判断されるのだけれども、ただ、それが当該国の国籍証明が出ないとかいうような関係で事実上無国籍という扱いになっておる。したがって、外国人登録の上では無国籍という表示がされておるけれども、実体的にはアメリカならアメリカの国籍を持っているという意味ではそれがそごしておるのではないかという意味で書かれておるものと承知しております。

○稲葉(誠)委員 外国人登録の問題はきょうの問題じゃありません、もちろん関連はいたしますけれども。ちょっとここのところよくわからないのですね。別の機会にお尋ねすることにいたしますが……。
 実はこの法案が通ったときに、父母両系主義をとりますが、一体具体的にどういう問題が――問題というと語弊があるのですけれども、どういう案件がまず考えられるかということですね。これはこの前の国籍法のときには近隣諸国との関係ということを盛んに言っておるわけですね。それで近隣諸国との関係で、父系主義をとっている近隣諸国が、日本も父系主義をとればそこで二重国籍が生まれないということを非常に重視しておるわけですね。それと、今度はこれが通って父母両系主義になると、まず近隣諸国との関係でどういう点が問題になってくるわけですか。

○枇杷田政府委員 まず中国との関係では、中国は父母両系主義を採用いたしました。したがいまして、日本人と中国人との間で婚姻をしてその間に子供が生まれますと、そこでは二重国籍という問題が出てまいります。それから韓国の場合には、現在のところ父系主義のままでございますので、したがいまして韓国の男性と日本人の女性とが結婚して子供が生まれた場合には、新法が適用になりますと二重国籍という問題が生じますけれども、日本人の男性と韓国人の女性とが結婚して生
まれた場合には、現在と同じように日本国籍のままということになるわけでございますが、韓国も婦人差別撤廃条約に署名をいたしておりますので、近くまたそういう関係での改正があるかもしれない。そうなれば、そしてもし父母両系主義を採用することになれば、近隣諸国との関係では一番接触の多いところでは血統による二重国籍の問題が生ずるということになってこようかと思います。

○稲葉(誠)委員 午前中の森委員の質問だったと思いますが、重国籍が今大体二千人ぐらいおる、今度は、これが施行になると一万人ぐらいにふえるという話がありましたね。そうすると、その一万人ぐらいにふえるということの、細かいあれは別として、ある程度の具体的内容というのはどういうふうになるわけですか。特に近隣諸国との関係ではどういうふうになるのですか。

○枇杷田政府委員 現行法のもとにおきましては、重国籍が生ずるのは生地主義との関係で生ずるのが主たる理由でありますけれども、それが年間約二千人出ております。これから父母両系主義ということになりますと、国際結婚で一番多いのが韓国系、それから中国系の方との婚姻関係でございます。その婚姻関係の数が年間に大体八千組ぐらいおります。その中で、先ほど申し上げましたように、韓国は目下のところ父系主義をとっておりますので、韓国人の女性と日本人の男性とが結婚した場合には重国籍の問題は生じないだろう。したがってそういう件数を差し引きまして、そして、現在のところ一組の夫婦で大体一・七四人の子供が生まれておるというところから推計をして計算いたしますと、父母両系の関係で国際結婚から生ずる二重国籍は大体一万人ぐらいであろう、これも極めて大まかな計算でございますけれども、そういうことで、一万二千人を超える人が今後重国籍者になるであろうという計算をいたしておるわけでございます。

○稲葉(誠)委員 そこで、こういう問題があるわけですね。「中国人父、日本国民母の子は、現行法の下では中国籍として処遇されるが、我が国が父母両系主義に改める場合には、日本国内で出生じたその子は、中国籍を所持できなくなるのであり、それがその子にとって、あるいは両親にとって望ましい結果であるかどうかについては、反対の見解もあろう。このような事態は、イラクその他との関係でも生じる。」こういうふうに当時の五課長は書いておられるのですが、イラクの問題は別として、この前の問題は具体的にはどういうことなのでしょうか。

○枇杷田政府委員 中国では父母両系主義を採用いたしましたけれども、国外での出生児につきましては、重国籍を生じて、そしてその国外に定住するという場合には中国籍は取得しないというふうな形でいわば重国籍の解消策と申しましょうか、そういう立法をしておりますので、日本で生まれますと、中国から見ますと国外でございますので、そして日本で定住をしておるという関係になりますと、中国の国籍法の条文上は中国の国籍を失うことになるのではなかろうかというふうに思います。中国の確立した解釈というものはまだ承知しておりませんけれども、条文の上からはそういうふうなことになるのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。

○稲葉(誠)委員 韓国人の父親と正式な婚姻関係を持たない日本人の妻との場合で子供が生まれた。認知しますと、それは韓国籍を得ることになっているのですね、今の韓国の国籍法ですか。日本の旧国籍法もそういうふうになっておったようですね、認知で。しかし、認知というのは、ただ親が自分の子供であるということを認めることであって、国籍とは本来関係ないものじゃないですか。だから、日本はそれをやめましたよね。
 そういうことから言うと、今言ったような韓国、よその国のことではありますけれども、近隣諸国のそういう法律がそのまま残っている状態は非常に混乱を増してくることになるのではないですか。これはどういうふうになるのですか。

○枇杷田政府委員 御指摘のように、韓国の場合には、日本人の女性と韓国人の男性とが婚姻しないで、婚姻外で子供ができる、そうしますと、日本の国籍法によって日本の国籍がその子供に与えられることになります。それで、その後に父親が認知をいたしますと、韓国の国籍法によって韓国の国籍が与えられますが、出生後六カ月以内に日本の国籍を離脱しなければ韓国の国籍を喪失するということになっております。確かに身分行為によって国籍の取得をさせるかさせないかということは、これは各国の立法によるわけでございますけれども、日本的な考え方からいたしますと、そういう身分行為で国籍がついたりつかなかったりするというのは現行の国籍法ができて以来なじまない考え方でございますので、ちょっと奇異な感じがしないわけではございませんが、世界でも身分行為によって国籍を付与するという例もないわけではございません。

○稲葉(誠)委員 身分行為によって国籍を付与する例は二、三あります。相当な国というとおかしいのですが、そういう国でもそういうふうにやっておるところなんかあるように聞いておるのですが、それはそれとして、そこで問題となってまいりますことは、まず重国籍を得た場合に、一体その人たちにとってメリットがどういうふうになるかということから先に御説明を願いたい、こう思うわけです。デメリットの方はまた後でお聞きしますけれども、まずメリットの方を先にお聞かせ願いたい、こう思います。

○枇杷田政府委員 ちょっとその前に、先ほどの答弁で間違いがございましたので訂正させていただきますが、出生後六カ月以内に日本の国籍を離脱しなければと申し上げましたけれども、認知後六カ月の間違いでございましたので、訂正させていただきます。
 次に、ただいまの御質問でございますけれども、二重国籍を持っていればどのような利益があるかということ、これはちょっとよくわからない点がございますが、まず国籍を持っておるということの最大のメリットと申しますか、それは国籍を有している国に居住したりあるいは入国したりするということが常に保護されておるという関係があろうかと思います。そういう意味でどちらの国にも行けるということが一応のメリットかと思います。
 それから、外交保護権の面から申しますと、これは裏腹の問題になりますけれども、一応二つの国の外交保護権の保護を受ける形になっておる。これがまた逆に不利益になるという場合もあろうかとも思いますけれども、そういうことが主たることであろうと思います。
 あと、税金その他の関係につきましてはそれぞれ大体所得の生じたところで課税されるということでございますので、それほど差異はなかろうかと思いますが、いざというときにどちらの国でも要するに入国して居住することができるということが現実的には一番大きなメリットではないかと考えております。

○稲葉(誠)委員 今の問題の中で、デメリットの問題は後で聞くわけですけれども、そうするとそのメリットというのは子供のころはずっとメリットが続くわけですか。デメリットというのは子供の状態のときにはないわけですか。――ちょっと質問の意味がわからないかな。それじゃ先にデメリットも説明していただきましょうか。その方がわかりいいでしょう。

○枇杷田政府委員 デメリットの関係につきましては、抽象的なことになるかとも思いますけれども、要するに一人の人間に対する対人主権を複数の国が持つということからいろいろな問題が生ずるだろう。それからまた逆に主権在民という観点から二つの国の主権者として行使するということ自身が矛盾を生ずるのではなかろうかという抽象的な問題がございます。そのほかに具体的な問題といたしますと、我が国では兵役の義務というものはありませんけれども、我が国の国籍を有する者が同時に他国籍を持っておって、その他国の関係で兵役に服するということは、日本のあり方の問題としては少し問題が生ずるのではなかろうか
ということが一つございます。
 それから、外交保護権の問題といたしまして、先ほどメリットの面もあるかもしれないと申し上げましたけれども、ある国で何か問題が起きたときに、二つの国の関係で、要するにその外交保護権を行使しようとする交渉の相手国がその当該本人の国籍を有するということになりますと、自国民という扱いになりますので、日本の方に実質的な国籍があるという場合でも外交保護権の行使が十分にできないという結果が生ずることもあるかもしれませんし、それから犯罪人の引き渡しの関係につきましても、一つの国籍のある国については自国民という扱いでまた外交上の問題が生ずるということもあろうかと思います。そういうふうな面でいろいろのデメリットがあるだろうというふうに考えております。

○稲葉(誠)委員 そうすると、お話を聞いていますと、子供のころ、幾つまでが子供と言うかは別として、子供のころ別に弊害というか、そういうふうなものはないんじゃないですか。

○枇杷田政府委員 未成年の場合には大体親に扶養されて親と一緒に生活をするということでございますので、子供が独自にということはございません。また兵役の義務ということもないわけでございますし、またいろいろな犯罪とか、そういうようなことにつきましても余りその対象にならないということもございますので、子供の時分には主に親との関係で一緒になると言っている限りにおいては問題になることは少なかろうと思います。そういう意味で、各国の立法例でいろいろな場合に未成年者については、まだ何といいますか二重国籍の状態が具体的な弊害を生みにくいということで、許容できるならば、未成年であれば比較的許容しやすいというような態度をとっているように見受けられます。

○稲葉(誠)委員 国籍法の抵触についてのある種の問題に関する条約というのは、いわゆるヘーグ条約ですね。これはどういう条約であって、日本としては署名はしているけれども批准はしてないわけですね。これはどういうわけですか。

○枇杷田政府委員 ハーグ条約は、一口で申しますと国籍唯一の原則をうたいまして、積極的な国籍の抵触すなわち重国籍の解消、それから消極的な抵触、無国籍の解消というのをねらった条約でございます。これについて日本は署名をいたしておりますけれども、何分にも一九三〇年というかなり前の時代のことでございますし、またその後のいろいろな各国の国籍法についての立法などの動きもかなりその当時とは違った要素がございます。したがいまして、ちょっと言葉は乱暴かもしれませんけれども、ちょっと古くなっておるという関係でございますので、現時点では批准するということはできないのではないかと思いますが、そこにうたわれております国籍唯一の原則というのはなお尊重すべき内容があるだろう、何か国籍法について考える場合には一つの大きな参考資料といいますか、考え方としては参考にすべきものであろうというふうに考えております。

○稲葉(誠)委員 国籍唯一の原則というのは確かに存在しているし、それはそれなりの大きな理由があることは言うまでもないわけですけれども、近来非常に国際結婚が進んできて、殊にヨーロッパの中ではそれが進んでいるわけですね。そうすると、そういうところでは重国籍が非常にふえて、それに伴って特段の弊害というものは生まれてないのではないですか。日本とは民族、国家の形成の過程から何から全部違うから。殊にECの場合、一つのサークルというか、そういうような関係があるからかもわかりませんけれども、ECでは非常にふえているわけですね。
 それで、何かそこでは重国籍の減少及び重国籍者の兵役義務に関する協定というのが結ばれておるわけですね。これはどの程度の国が参加してどういう内容を持って、どういう拘束力というふうなものがあるのですか。

○枇杷田政府委員 ヨーロッパにおきましてはやはり国籍唯一の原則というものは大事な原則だというふうに考えておるようでございまして、ヨーロッパ理事会においても閣僚評議会でその原則をうたう決議をいたしております。ただ、現実問題といたしますと、なかなかそれを貫くということがほかの面で無理だろうということで、必ずしも徹底した制度はとっておらないようでございますが、一つには、ヨーロッパの内部におきましてはただいま御指摘の重国籍の減少及び重国籍者の兵役義務に関する協定というのがございまして、それによって少なくとも兵役の関係については常住している国の兵役というものを優先させるというふうな内容にしておりまして、個別の問題を各ヨーロッパの内部において解消するということによって重国籍の弊害を除去しようという考え方があろうかと思います。
 この重国籍の減少及び重国籍者の兵役義務に関する協定については、一九八一年の十二月現在の批准国としては十カ国が批准をいたしておりまして、オーストリア、デンマーク、フランス、西ドイツ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、イギリスでございますが、この協定に基づいて兵役の関係についてお互いに調整をしてダブった兵役の義務は課さないというようなことになっておるわけでございまして、ただ、現在ヨーロッパ内部においていわばそういうことが問題になるような強度な国際緊張がないということで、二重国籍の問題が非常に大きな緊迫した問題として生じておるという状況にないのではなかろうかというふうに思っております。

○稲葉(誠)委員 今のお話を聞いていたときに、未成年者の場合には重国籍であっても特段問題が起きないように思うのですよね。そうなってくるのに、子供が小さいときに親が子供の意思を無視してというか、子供の意思にかかわりなくといいますか、その国籍を選択してしまうということは、これは選択権というのは子供にあるんだから、仮に十五歳以下の場合はどうなるんですか。その場合でも親が法定代理人で選択できるのですか。それは本来、子の選択権なんだから、後でそれが子供の意思と違ってきたときにはまた直せばいいじゃないか、直す方法は帰化によるのか何かそういう格好でやるとするならば、子供の意思というものを尊重すれば、ある年齢段階までは重国籍をそのまま容認するというようなことも考えられてくるのじゃないですか。そこはどうなのでしょうか。実際にそういうふうな形をとっている国もあるのですか。

○枇杷田政府委員 確かに未成年の間は重国籍の弊害というのは具体的には生じにくいという形でございますので、したがいまして、今度の改正法案の中の選択の義務も、成人に達してから二年の間に選択をしてくださいということで、成人に達して十分判断能力ができてから、しかも熟慮期間を二年与えるという考え方をとっております。しかし、また一方、成年に達してからでなければ選択の宣言ができないというわけでもないわけでございまして、もし十五歳未満である場合には、法定代理人がかわってするのだという規定も設けているわけでございます。これは、最終的には本人だけの意思に決めてしまえばいいではないかということも一つの考え方であろうかと思いますけれども、全く形骸化されたような国籍につきましては早く整理をした方がいいという面もございます。それから、各国の立法例によりますと、十八歳をもって成年とするというようなところもございます。
 したがいまして、親が、両親がもうこちらの方の国籍は当然要らないんだ、形骸化しているものだという判断で、むしろ単国籍にした方がいいという判断をすれば、それでもって単国籍にするということもあながちとめる必要もないであろう。しかし、親の方が本人の意思に任せて判断させようと思えば、法律的には二十二歳までの間にすればいいわけでございますので、その辺は余り画一的にしないという考え方で案をつくっておるわけでございます。
 外国の例といたしますと、ただいま御指摘のように、本人が二十二歳に達してから決めるという
ような例もあるようでございます。

○稲葉(誠)委員 この重国籍のあれができてから一番大きな問題になるのは、率直に言うと、さっきお話が出た韓国との問題が一番大きな問題になるだろう。しかも、それは兵役義務の問題だと思うのですね、日本の憲法ではそれはできないわけですから。そうなってきたときに、日本にいる重国籍を持っている人 一方において韓国人、一方において日本人、その者に対して韓国の兵役法というものが適用されない、現在の段階で適用されないという保証は一体あるのですか、ないのですか。どうなっているのですか。

○枇杷田政府委員 韓国におきましては、在日の韓国人については兵役義務はかけないという態度を示しております。別にそれは法的に決まっておるというものでございませんが、そういう態度を示しておる。現実問題として、徴兵行為を他国で行うということはこれまた一つの問題を生ずる点でございますので、そういうことはしないということで現在まで来ているように聞いております。

○稲葉(誠)委員 他国で行うことはできないというのですけれども、領事条約の場合ではできるものがあるのではないかと思いますが、それは別として、あれじゃないですか、日本にいたところで、それは、韓国に来いと言って、そこで兵役に服せよということは現行の韓国の兵役法でもできるのではないですか。

○枇杷田政府委員 在日の韓国人で日本に永住している者については、これは韓国の兵役法で兵役義務がないということが明示されておるようでございます。永住してないで日本におる方については、帰国を命じてそこで徴兵するということはあり得るわけでございます。

○稲葉(誠)委員 その永住という意味は、どういう範囲の永住を指しておるのですか。

○枇杷田政府委員 これは外国の法律の解釈でございますので、ちょっと私責任を持ってお答えできませんけれども、条文に永住という言葉を使っておりますので、これは典型的なものは生来ずっとということが一番長いことだと思いますが、要するに、今までもかなり長期間住居を持ち、将来もずっと日本なら日本に住居を持つという意思があるという状態を一般的には永住と言うのではなかろうかと思います。

○稲葉(誠)委員 私の言う意味は、日韓条約との関係の中でその永住というのをどういうふうにとらえておるのですかと聞いておるわけです。一般的な永住ということを言っているわけじゃないのです。日韓条約との関係はないのですか、その永住という意味は。どうなんですか。

○枇杷田政府委員 韓国の兵役法に永住という言葉を使っておる面では、一般的な永住というものの解釈の問題になろうかと思います。日本と韓国との間の永住という意味は、要するに、期限をつけないでずっと日本に住居を持つという意味で使われているのだと思います。

○稲葉(誠)委員 使われているのだと思いますじゃなくて、これは後でというか、何かの折にえらい問題が起きる可能性がありますわね。だから、韓国との間にこの問題に関連をする協定なら協定でぴしっとしておかないと、大変な問題になってくる可能性があるのじゃないですか。そこが第一ですね。
 それから、韓国の場合は、重国籍であると国籍の離脱を認めないのじゃないですか。どういうふうになっているのですか。

○枇杷田政府委員 韓国の国籍法によりますと、二重国籍者については離脱を認めております。

○稲葉(誠)委員 今の永住というのは韓国の兵役法にある。それから日本の場合に、何か永住ということについて韓国との間に話し合いがあるようなないような、具体的にどういうことでどういうコンクリートなものがあるのかないのか、どうもよくわからないのですが、そういう点がはっきりしてない段階でやると、後で大きな問題を起こしてくる可能性があるのじゃないですか。ですから、韓国だけじゃないかもわかりませんけれども、しっかりした協定をその場合の問題について結ぶ必要があるのではないかと思うので、その点についてはどうでしょうかと聞いているわけです。
 ただ、日本の憲法では兵役義務というものは認めてないわけですから、協定を結ぶといっても、どういう形にするのかいろいろ難しい問題は確かに私もあると思うのです。それはわかりますけれども、このままいくと、今七十万と言われておる在日朝鮮人というか、その人たちに対する影響がこの法案によってどういうふうに出てくるかということが一番大きな問題で、現行法が昭和二十五年にできるときから近隣諸国との関係が言われているわけですから、今後もそういう問題についてもう少しぴしっとしたものをしていかないと……。私は非常に難しいと思いますよ。技術的にも法律的にも非常に難しい点は確かにあると思うのですけれども、そこをどういうふうにしていくかということが問題になってくるのではなかろうか、こういうふうに思うのです。
 私も法案の中で別にこの問題だけに時間をかけて質問をさせていただきたいと考えておりますので、あなた方の方でもそれらの人々に及ぼす影響についての対策なり何なりを十分考えていっていただきたい、こういうふうに思う次第です。

○宮崎委員長 中村巖君。

○中村(巖)委員 私は、最初に基本的なことについてお伺いをしたいと思うわけでございます。
 法務委員会調査室からいただいた資料の中にも、この国籍の決定方法について出生地主義国あるいは血統主義国、こういう二つの大きな方法があるということで、それぞれの立法例というか、それぞれの国のとる主義、どういう国がこういう主義をとっておるのかということが書いてあるようでありますけれども、一つは、出生地主義及び血統主義以外の国籍の決定方法というものがあるのかどうかということ。
 それから、日本の今度の国籍法も、従来もそうでありますけれども、血統主義によっておるわけでございますけれども、血統主義によるべきであって出生地主義によるべきではないというゆえんについて御説明をいただきたいと思います。

○枇杷田政府委員 世界のとっております国籍の決定の根拠といたしますと、大きく分けると生地主義と血統主義ということになります。そして、若干その関係を取りまぜているというところもあるわけでございますが、それ以外のものというのは私どもは承知しておりません。
 ただ、血統主義という中に、身分行為、婚姻であるとか、あるいは養子縁組であるとかいうことによって国籍を付与する、あるいは喪失するというふうな法制をとっておるところもある。これは厳密な意味の血統主義ではないかもしれませんが、そういう修正が加えられているところもございます。
 我が国が生地主義をとっておりませんのは――大体、生地主義をとっておる国というのは移民受け入れ国に多く見られるところでございまして、世界各国の国籍を持っている方が集まってそこで新しい国をつくっていくというところは、当然生地主義をとらないと国が維持できないということになりますので、生地主義をとることになるわけでございます。古くからの国は大体血統主義をとっております。我が国もよく単一民族国家と言われておりますように、日本民族イコール日本人、それがイコール日本国民という観念が強いところでございます。したがいまして、伝統的といいますか、それからまた国民感情から申しましても、生地主義をとるというのには向かないのではないか。従来から血統主義をとっておるところでございます。
 また、日本の場合に、生地主義をとるということになりますと、これは二重国籍の問題がにわかにふえるというふうなこともございますので、現在のところ、日本の国籍法について生地主義をとれという意見はどこにもないという状況でございます。

○中村(巖)委員 他国のことで恐縮でございますけれども、今世界の趨勢としては、局長のおっしゃる生地主義というようなものが減少をしつつ
あるのか、あるいは生地主義というものがふえつつあるのか、その辺はいかがでございましょうか。

○枇杷田政府委員 大体、生地主義の国は生地主義のまま、血統主義の国は血統主義のままということでございますが、そのどちらかに純粋にということはできかねることがございますので、したがいまして、ある部分についてはお互いの主義を補完的に取り入れるということもございます。イギリスなどは、元来は生地主義の強い国でございますけれども、最近はそれに血統主義をかなり加味するというふうな改正をいたしております。

○中村(巖)委員 次に、外国人の男性と婚姻をした日本人の女性が日本の国籍を持っている、こういうことになるわけでありますけれども、外国人の男性と婚姻をしたために、外国人の男性の国の国籍法によって日本国籍を捨てなければならない、こういうようなことというのはあるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 日本の女性が外国人と婚姻することによりまして夫の方の国籍を当然取得するというふうに決められている国は、韓国とかギリシャとかフランスでございます。ただ韓国の場合には、婚姻後六カ月以内にもとの国の国籍を離脱しなければ、韓国の国籍を、一たん取得したものを失ってしまうというような法制にもなっておりますし、またフランスなどについても本人の意思というものも尊重する建前になっております。しかし、いずれにしましても、そういう国では一たんは外国の国籍を与えることになりますが、それに伴って日本の国籍が失われるかどうかという点につきましては、これは日本の国籍法で決めるべき問題でございます。日本の国籍法では、そのような身分行為によって日本の国籍を喪失するという規定は設けておりません。したがいまして、仮に婚姻によって外国の国籍を取得いたしましても、日本の国籍はなくならない。したがって、二重の国籍を持つということになるわけでございます。

○中村(巖)委員 今の場合に、日本の国籍法によりましても相手国に帰化をする、あるいはまた志望によって相手国の国籍を取得した場合には日本の国籍を失う、こういうことになっているようでありますけれども、そうなりますと、現実にそういう形で外国人の男性と結婚をして、あるいは帰化もそうでありますけれども、日本の国籍を自分の意思に基づいて失う方というのは、数の上では相当多いということになるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 先ほどの例のように、日本の女性が外国人と結婚しまして重国籍ということになりますと、離脱ができます。したがって、離脱届によって日本の国籍を喪失するということがございます。これは数は余りはっきりいたしませんけれども、年間数百件程度のものだろう――そんなにもないかもしれません。
 ただ、外国の方に帰化をいたしますと、現行の国籍法の規定によりまして、日本の国籍は実体的には喪失することになります。ただ外国に帰化をいたしました場合に、これは本来はすぐ戸籍の方に届け出が出て、戸籍の方でもその処理をするというのが建前でございますけれども、外国でのことでございますので、それは我が国の方ではなかなか完全に把握できておらないということで、どの程度の数があるか、これはちょっと数字をつかまえておらないという状況にございます。
    〔委員長退席、高村委員長代理着席〕

○中村(巖)委員 今度、新しい法律によりますと、二重国籍ということが多く生ずるということでありますけれども、二重国籍を解消しなければならないか、それともそのまま放置しておっていいのかということについてはいろいろと意見があろうかと思うわけでありますけれども、これまた外国の傾向、先ほど法務省の方からヨーロッパ理事会のお話がありましたけれども、大体今の世界の傾向としては、二重国籍、国籍の積極的な抵触というものを何らかの方法で解消するという方向にいろいろ考えておるのか、趨勢としては、重国籍はやむを得ないものとして、重国籍そのものから生ずるところの不都合というか、重国籍のために起こってくる個々の具体的問題を解決することにとどめる方向にあるのか、その辺はいかがでございましょう。

○枇杷田政府委員 各国の立法の傾向を見ておりますと、重国籍というのは解消したいということはどこの国でも考えているようでございます。ただ、それをどの程度実施できるかという問題が一つございます。我が国のように戸籍制度がありますと、それなりに政府の方でその重国籍の状況を把握するということも可能でございますけれども、そういうような制度のない国では重国籍者を把握することはなかなか難しい。したがって、解消の具体的な方策ということになると行き詰まってしまうこともあるようでございます。しかし、何とか解消の方向には持っていきたい。
 そこで、先ほどお話が出ましたヨーロッパ理事会におきましては、選択の制度というものをつくって、ヨーロッパ内部ではどちらか少なくとも一つの国籍にお互いにするようにしようではないかという決議をしておるわけでございます。そういう決議を受けて、イタリアはそういう選択制度というものを採用する立法をいたしておりますが、ほかの国におきましては、先ほど申しましたような事情で、重国籍は解消したいけれども、それを具体的に実効あらしめる制度を同時にするということがなかなか困難であるということから、ある程度後退をして、先ほどの重国籍の解消とかあるいは兵役義務の関係とか、そういうふうな協定を結んで、そして個別の問題について重国籍の弊害が具体的な問題にならないような手当てをするということで処理をするとか、あるいは北欧三国などのように、それぞれの協定で歩調を合わせて三国間では重国籍がなるべく生じないような手だてを講ずるとかというような措置を講じているようでございます。

○中村(巖)委員 そうすると、法務省の御認識とすれば、日本の場合には幸いにして戸籍制度というものが大変完備をしているので、重国籍の解消というものができることになる、それが世界のそういう立法の流れの中に沿っていることになるのだ、こういうことですか。

○枇杷田政府委員 今度の立法の姿勢といたしますと、国籍唯一の原則というものを貫くべきだという立場に立ちまして、そしてまた、これは決め手になるあれではございませんけれども、戸籍制度というものがあるためにその選択制度というものも実施をするということが我が国においては可能である。したがいまして、選択制度というものをとることによって重国籍の解消がかなりの面でできるのではないかというような発想になったことも間違いございません。
 また、もう一つ重国籍の解消策といたしますと留保制度というものも昔からとっておりますが、そういうものも尊重し、あるいはその中身も少し拡大をいたしまして、あわせて重国籍の解消ということができるし、またそれを維持していきたいという考えで立案されたものでございます。

○中村(巖)委員 今、重国籍の解消の方法として御説明いただきましたけれども、中には、今度新しい法律で選択制度というものを導入をするようになったので国籍の留保制度というものが必要ないじゃないか、こういうような意見があるようでございます。これに対しましてはどういうお考えでございましょう。

○枇杷田政府委員 留保制度と申しますのは、国外で生まれて二重国籍になるという方については一般的に地縁性が薄い、生地主義国の考え方のような、そういう意味での国籍の決定要素というものがかなり薄い。したがって、もしそのまま日本国籍を取得したままにしておきますと、実効性のない日本国籍というものが残るのかもしれない、そういう可能性が強い。したがって、それを出生のときにひとつ積極的な意思表示によって留保していただくということ、そしてまた反面、留保されない方は日本国籍を失うということによって、その段階で重国籍はかなり解消できるのではないか。現にブラジルなどの例では、日系の方で、日本の国籍法では日本国籍を取得できるはずの方の大体三分の一ぐらいの方しか留保届を出しておられ
ないというようにも聞いております。そういうふうなことが実際に合っているやり方ではないか。
 それから同時に、留保届を出されますということは、出生届と同時にされることになっております。したがいまして、もし留保制度というものをやめてしまいますと、形の上でといいますか法律的に日本人、日本国籍を持つことになるのだけれども、戸籍にも載りません。したがって、日本の国としては把握できない日本国籍者というものがかなり出ることになる。それがまたそのままの状態で選択制度にのせるにいたしましても、そこではそういう把握されていない日本国籍の方が海外にかなりたくさんおられる。それに対して選択の催告をしておくということは事実上無理なことになります。そういうことになりますと、実効性がないような方がむしろ重国籍者、要するに催告ができないとか、それが困難だとかというようなことで重国籍のままで残ってしまうという妙な形になるわけでございます。したがいまして、選択制度をとるからといって留保制度が意味のないものではないわけで、あわせて重国籍の解消のためには必要な制度ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。

○中村(巖)委員 留保制度のことですけれども、留保制度が現行の国籍法より今度の国籍法では拡大をされる、こういうことになっているわけですけれども、拡大をしなければならないということになったその理由というのはどういうことでしょう。

○枇杷田政府委員 現行法では、留保制度というのは重国籍の解消策の一つとして考えられているわけでございますが、現行法の制定当時には、海外に生まれて重国籍を生ずるというのは、その生まれた国が生地主義をとっておるということがほとんどでございます。要するに、血統の関係で重国籍が生ずるというのは、制定当時におきましては父系が各国の共通でございましたから、そういうことは予定しておらなかったわけでございます。ところが、各国で父母両系主義ということになりますと、国外で生まれて重国籍になる方の中には血統によって重国籍になるという方も出てきたわけでございます。
 そういうことで考えますと、片っ方の親が外国人である、しかも生まれたところが外国であるということになりますと、日本国籍をそのままずっと有効性、実効性のある国籍として維持するような状況にあるという可能性がかなり薄いという面では、現在の生地主義で生まれたことによる重国籍者とそう違いはないことになるのではないか。そして先ほど申しましたような、日本の国といたしまして日本の国籍のある方を十分に把握しておくというような意味合いもあわせて考えますと、海外で生まれた血統主義による重国籍者についても日本の国籍をなお親としては留保しておきたいという考え方をお持ちの方は、留保していただくことによってこれが実効性のない日本国籍の取得というものを解消するゆえんではなかろうかというふうに考えたことにその理由があるわけでございます。
    〔高村委員長代理退席、委員長着席〕

○中村(巖)委員 次に、無国籍の問題についてお尋ねをしますけれども、まず無国籍者というものが発生をする理由と申しますか、そういうものは類型にしてどのくらいあるのか、それぞれどういう類型があるのかということについてお教えをいただきたいと思います。

○枇杷田政府委員 無国籍者が生ずる類型というのも一概には言えないわけでございますが、各国の国籍法がそれぞれまちまちでございますので、そのはざまに入って、どちらの国といいますか、関係のある国の国籍を取得することができないというようなケースが一つはあるわけでございます。
 それからもう一つは、日本の場合には、日本国籍を離脱する場合には重国籍であるということが要件になっておりますけれども、別に重国籍でなくても自分の国の国籍を離脱できるというような法制のところもあります。そういう法制の国の人がその国の国籍を離脱いたしますと、無国籍が後発的に生じます。それから、沖縄などで見られるケースでございますけれども、実体的にはどこかの国の国籍を持っておるというようなことが言えるわけでございますけれども、その実体的な国籍を持っているということが当該国の証明が事実上不可能であるということによって、よく調べれば米国籍なら米国籍という認定ができるのかもしれませんけれども、事実上証明ができないというために無国籍扱いとせざるを得ないという意味での無国籍者というのも出てくるわけでございます。

○中村(巖)委員 そういう無国籍の場合には、出入国管理の関係では外国人ということで把握をされて数が出されているんでしょうか。そういう者は無国籍という外国人登録がなされて、登録にそういうふうに記入がされている人が実際にどのくらいの数があるか、それがおわかりでしたらお教えをいただきたい。

○枇杷田政府委員 外国人登録は、日本国籍を有しない者が外国人でございますので、したがって、外国人登録の対象になる方でございます。所属する国の国籍がないという場合には、外国人登録上は無国籍という表示がされるわけでございます。そういう無国籍という表示をされておられる方は、昨年の九月末現在で千九百四十七人になっております。

○中村(巖)委員 その千九百四十七人のうちに、先ほどちょっと類型という変な言葉で言ったのですが、一定の分類というものは全然できておらない、またできないのかどうか、その辺はいかがでしょう。

○枇杷田政府委員 先ほど申しました分類ごとの内訳の数字はちょっと出ておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、大多数の方は、中国籍を離脱されたことによっての無国籍という方がほとんどであると聞いております。しかし、その数はわかりません。

○中村(巖)委員 そういう無国籍の方々が日本国籍を取得することを希望しておられるのかどうか、それともあえて積極的に無国籍にとどまりたいという意思であるのかどうか、そういうことはお調べになったことはありますか。

○枇杷田政府委員 その無国籍の方々の内心の御希望については私どもも調査をしたことはございません。ただ、かつて五千人とか六千人とかと言われておりました方々が現在二千人をちょっと切るという数字になっておりますが、その多くの方々は実は帰化の申請をされまして、そして日本国籍を取得されるということによって無国籍ではなくなった、日本人になったという方がほとんどのように思いますので、現在無国籍の方々の中にも帰化によって日本の国籍を取得したいと考えておられる方もおられるのではないかと思います。

○中村(巖)委員 無国籍のまま日本に住んでおられることによって考えられるところのメリット、デメリットはどういうものがありましょう。

○枇杷田政府委員 無国籍でありましても、外国人ということでございますので、ほかの国籍を持っておられる外国人と日本の国内におきましては扱い方に差異はないと思いますので、その面ではメリット、デメリットはないのではないかと思います。

○中村(巖)委員 先ほど他の委員の御質問の中で、沖縄の無国籍者の問題が出ておったわけでありますけれども、沖縄の無国籍者というものについて、数も先ほどおっしゃられたわけでございますけれども、そういう人たちはやはり当然日本の国籍を取得したいという希望であるかどうかということですが、その辺についても、数をお調べになっただけで、特別に意思を調査されたということはないわけですか。

○枇杷田政府委員 先ほど沖縄に無国籍の方が四十九人おられると申し上げましたが、その方々がどういうふうな御希望を持っておられるかということは一々私どもの方で調べたことはございません。ただ弁護士会などが調べられたところによりますと、日本国籍を取得する希望を持っておられる方もあるし、それからまた父親がアメリカ軍人
であるということから米国籍を取るような希望を持っておられる方もあると聞いておりますけれども、具体的にそれがどういう方で、何人ずつおられるかというふうなことは私ども承知いたしておりません。

○中村(巖)委員 次に、国籍選択の制度が新法では予定されているわけでありますけれども、重国籍の解消のために選択制度をとられるということは非常によくわかるわけでありますけれども、その選択の時期を二十歳、二十二歳とされたその積極的理由はどういうことでございましょうか。

○枇杷田政府委員 一つには、自分の国籍をどう決定するかということは重要な問題でございますので、十分な判断能力ができる成年に達してから、しかもまた熟慮期間をある程度置いて、その間に判断してもらおう、それが一番適当であろうという面がございます。それからもう一つは、先ほども話が出ましたように、未成年である間は重国籍でありましても、その重国籍の問題というのが比較的少ないという面もございます。したがいまして、成年に達してから熟慮して決めてもらうようにする、そういうことが本人にできるようにすることが一番いいだろうということから、成年に達して後二年以内にという案になったわけでございます。

○中村(巖)委員 この選択の条文の中で、日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄するということを宣言するんだ、こういうことでございますけれども、外国の国籍を放棄するというのは、自分が一方的に放棄するということを宣言してしまえばいいのか、それで足りるのか。あるいは諸外国の中では、放棄を許さない国もあるのではないか、その辺はどうなるのでございましょうか。

○枇杷田政府委員 この日本の国籍を選択して、外国の国籍を放棄する旨の宣言というのは、いわば日本政府に対する宣言でございまして、当該国籍を持っておる外国について放棄の宣言をするというものではございません。日本の国に対して放棄をするということでございます。自分の態度としては、自分のこれからの生き方と申しますか、その態度としては、日本国籍だけがある、したがって外国の国籍は自分としては放棄する、そういう決意だといいますか、そういう気持ちだということを日本の国に対して宣言するわけでございます。
 したがいまして、その後、実際問題として外国の国籍の方を喪失させるということにつきましては、当該外国の法令の手続によってしなければならぬことになるわけでございますが、それは外国の制度がまちまちでございまして、離脱を認めるところもございますし、認めないところもある。認めるところでも、いろいろな条件が整わなければだめだというところもございます。しかし、日本の政府については、自分が帰属して運命共同体の中に入るという意味では日本の国籍だけを選ぶんだという意味合いを放棄の宣言という言葉の中にあらわしておるつもりでございます。

○中村(巖)委員 先ほど放棄、選択の年齢が二十歳であることの理由についてお尋ねいたしました。二十歳というのは未成年者が成年に達する年だ、こういうことのようでありますけれども、今日本の大学の制度なんかから考えますと、やはり二十二歳あるいはそれ以上にならないと大学を卒業できない。そういたしますと、これからの生活の方向性というか、どういうふうな生活をしていくかということについての決定がなかなかできないのではなかろうかというふうな点もあろうかと思うわけでございまして、先ほどのお話は、どうしても二十歳でなければならない、それ以上であったらばこういう不都合がある、こういう点が御説明ないように思うのですけれども、二十歳を超えて、あるいは二十五歳というような年齢にそれをしていくことによって不都合があるということになりましょうか。

○枇杷田政府委員 なるほど最近は大学進学率も多くなってきておりますけれども、大体二十歳のときには学校を卒業して一般の社会人として生活をするという方もまた多いわけでございます。したがいまして、大体二十歳になりますと自分の将来の生活ということの見通しもつかないわけではないでしょうし、それから、そういうことについての判断能力もできるということになるのではなかろうかということで、二十歳を考えたわけでございます。
 なお、これをもっと先まで延ばしたらどうだというふうな御意見も全くなかったわけではございません。ただ、それにつきましては、先ほども申し上げましたように、兵役の義務などについてはかなり重国籍が問題になるケースがございます。それが諸外国によりましては十八歳から始まるところもあるし、二十歳からというところもあるわけでございます。したがいまして、先ほど未成年の間は比較的重国籍による問題が具体化する率が少ないということも二十歳ということを基準にした理由の一つだと申し上げましたけれども、そういうことで二十歳が適当であるというふうに考えたわけでございます。
 なお、一方ではもっと若い年齢の時代に選択ではっきり決めるということにしてもいいのではないかという御意見も、いろいろ寄せられた御意見の中にはあったということも付言させていただきます。

○中村(巖)委員 次は、帰化の問題についてお尋ねをいたします。
 帰化の関係では、法務大臣の許可を得て帰化をするわけであります。そして、今度はそれに際しての帰化条件というものがいろいろな状況によっていろいろあるわけでありますけれども、この法務大臣の許可というようなものは、その要件と許可の関係は、その要件を満たせば必ず許可しなければならないというものであるわけですか、それとも、いわばかなりの程度自由裁量であるということであるのですか、そこをお伺いしたいと思います。

○枇杷田政府委員 帰化の申請がございました場合に、それを許可するかどうかということは、全くの法務大臣の自由裁量の問題だというふうに考えております。いろいろ帰化条件につきまして規定がございますけれども、そういう条件に当たらなければ許可をしてはいけないという制約を法務大臣が受けておるというのでありまして、その条件を満たしているからといって当然に帰化すべきものでもございません。したがいまして、帰化申請者の方でその条件に当たればいわば請求権のような権利があるというふうには私どもは考えておらないのでございます。

○中村(巖)委員 請求権のようなものではないということですけれども、要件がかなりはっきりと明確にうたわれているわけでありまして、ある程度こういうふうに要件がはっきりしている以上、自由裁量であっても、かなり羈束裁量的なものではないかというような気もするのですが、その辺はいかがでしょう。

○枇杷田政府委員 私どもはあくまでも自由裁量であると考えております。そういう条件に当たっております場合には、実際問題といたしますと、これは許可をするということでございまして、ことさらに不許可にするというようなことは実際上はいたしておりませんが、性格上は全くの自由裁量であるというふうに考えております。

○中村(巖)委員 帰化を今御答弁のような全くの自由裁量であるというような形に立法をする理由というのはどういうことでございましょう。

○枇杷田政府委員 もともと日本国籍を付与するということが帰化でございます。したがいまして、外国人に日本のいわば国籍を取得するという形での請求権があるとかというような形で構成することは、その事柄の性質上うまくないのではないかということから、現行法ではそのような自由裁量で制度をつくっておるというふうに考えておるわけでございます。

○中村(巖)委員 この帰化につきましては、最近の状況としては年間にどのくらいの申請数があるということでしょうか。それと、さらには許可になる数、これがおわかりになりましたら教えていただきたい。

○枇杷田政府委員 これは毎年増減がございますけれども、最近の例で申しますと、帰化申請者の数が大体九千人でございます。そのうち許可になるのが約八千人でございます。その他の方は、不許可または書類の不備等の理由によって取り下げるという方でございます。

○中村(巖)委員 九千人のうち八千人が許可になる、あとの一千人が不許可とか、取り下げも許可になる見込みがないから恐らく取り下げるのだと思いますけれども、そういうような不許可あるいは取り下げになる事例の中では、帰化要件のうちのどういうものが満たされないということが多いのでしょうか。そういうものを数字的に分類することができるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 不許可になりました事例についての不許可事由と申しますか、それについて分類した統計はとっておりませんけれども、大体の私どもの方の実務的な感覚から申しますと、まず身分、生活関係の問題、それから素行の関係、これは犯罪歴その他の関係、それから同化が十分にできているかできていないかというようなところが不許可の事例としては多い点だろうと思います。

○中村(巖)委員 そうすると、今度新法になったことに伴うところの簡易の帰化の制度、こういうものからすると、その要件に当たるものについては、その要件が大変形式的でございますから、ほとんど許可にならないということはないということになりましょうか。

○枇杷田政府委員 大体そのようにお考えいただいて間違いないと思います。

○中村(巖)委員 それから、戸籍法の関係でございますけれども、新法施行前に既に外国人と婚姻している者については、新法施行後、一定の経過措置は別として、新戸籍の編製と改姓というようなことができるようになって、しかし新法施行前のものについては、かなりの人が、婚姻してはおるけれども戸籍がそのままになって新戸籍が編製されていない、さらにまた従前の名前のままに残っておる、こういうことでございますけれども、それを、経過措置を大幅に拡大をしないで一定の限定をつけているということは、これはどういう理由からでございましょう。

○枇杷田政府委員 外国人と婚姻をした場合に、今度の法律案によりますと新戸籍を編製することになっておりますが、既に外国人と結婚しておられる方は、おおむね大方の方は親の戸籍に入ったままということになっております。この方たちは、新法ができますと分籍によって新戸籍をつくることができるようになります。それから、子供さんが生まれますと、今度は子供さんは日本国籍を取得して戸籍に記載する対象になりますので、その場合にも新戸籍を編製することになります。そういうことで逐次新戸籍が編製されていくということにしているわけでございます。そうすることが実際問題としては妥当であろうということでございます。
 それから、氏の関係につきましては、これは新法の施行前六カ月以内に婚姻された方については家庭裁判所の許可を得ないで届け出だけで、夫の場合が多いかと思いますけれども、配偶者である外国人の氏を名のることができるようにしております。そうなりますと、親の戸籍とは氏が違うことになりますので、この場合には新しい戸籍をつくるということにしておるわけでございますが、これも余りさかのぽりますと、現在の名前のままで婚姻後も社会生活が定着をして動いてきておりますので、婚姻を契機とする氏の変更ということで簡易な届け出の措置でやるということは適当でない、したがって家庭裁判所の許可が必要であろうというふうに考えておるわけでございまして、家庭裁判所の許可がもしありましたならば、その場合にはまた同じように新戸籍を編製するということになるわけでございます。

○中村(巖)委員 今のを逆に尋ねることになるかもしれませんけれども、六カ月以内に限っては家庭裁判所の許可を得ないで届け出でできるんだという理由というのは何なのでしょう。

○枇杷田政府委員 日本人同士の婚姻の場合には、婚姻の際にどちらかの氏を決めるということになっておるわけでございまして、婚姻の場合に、婚姻を契機として氏がどちらかの人が変わるということがあるわけでございます。
 したがいまして、今度外国人との婚姻の場合にも簡易な手続で変えるというのは、婚姻を契機としてということで考えるのが筋だろう。そうしますと、余り婚姻後長い年数がたってしまいますと、婚姻を契機としてということではなくなってしまう。そして、婚姻してからももとのままの姓でずっと社会生活が続いておりますと、かえってそれを簡単に変えるということは混乱を生ずることになるであろう。それをどの程度の期間がいいかということになりますと、これは何カ月でなければならないという決め手はないわけでございますけれども、半年間あれば婚姻の際に熟慮して決めるということに十分な期間ではないだろうか。それからもう一つ、子供さんが生まれるまでにどちらかを決定しておくということが望ましいという要素もございます。そういうことも加味いたしまして六カ月の期間内にということにしたわけでございます。

○中村(巖)委員 重ねてお聞きをするようですけれども、本法の施行前に外国人と婚姻をしている女性についても、新法施行後の場合と同じように簡易な方法で新戸籍を編製をし、夫の方の氏を名のるというような方法はできないということになるのでございましょうか。

○枇杷田政府委員 新法が施行されます六カ月よりもまだ前に婚姻をされた方につきましては、簡易な届け出による氏の変更というのはできないということにいたしております。その場合には原則に戻りまして、家庭裁判所の許可を得て氏の変更をするということはできるわけでございまして、家庭裁判所におきましても、このような簡易な制度ができたということは、家庭裁判所がどういうふうなお考えをとられるかわかりませんけれども、簡易に外国人の夫のあるいは妻の氏を名のれるような法制が成っだということは、家庭裁判所の方でそれなりの配慮がされるのではなかろうか、私どもはそう予想しておりますけれども、後は家庭裁判所の御判断の問題でございますが、建前として家庭裁判所の許可を得て氏の変更をしていただくということになるわけでございます。

○中村(巖)委員 今度は違う問題ですけれども、父母のいわゆる準正、それから認知、これによりまして今度は国籍を取得することができるようになるわけでありますけれども、こういう制度を新設をされました理由というのはどういうことでございましょう。

○枇杷田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、新法におきましても血統主義をとっておるわけでございます。しかしながら、その血統主義をあらわします第二条の第一号で「父又は母が」というふうに書いてございますが、これは法律上の父母ということになるわけでございます。ところが、世間では往々にいたしまして子供が生まれてから婚姻届を出す、それで認知をするとか、そういうふうなケースが少なくないわけでございまして、実際上は後になって婚姻をした夫婦の間の子供なんだけれども、出生のときに婚姻届が出ていなかったというようなこともあるわけでございます。実質的には、血統主義という面から申しますと、そういう方にとっても日本国籍を与えるという道があってもいいのではないか。要するに血統主義の補完措置と申しますか、そういうふうなことがしかるべきだろうということで、準正による場合に、本人の日本国籍を取得するという意思表示があればそれで日本国籍を与えるという制度を設けた次第でございます。

○中村(巖)委員 現行の国籍法ではそういう身分行為によっては国籍を取得しないんだというふうにされておったわけで、そこのところは、現行法ができるときにはやはり考え方が違ったということになるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 現行法でも身分行為によって国籍を取得するという道は設けておりません。今度の法律案でも、身分行為によって日本国籍を直
にといいますか、直ちに取得するということではなくて、いわばそういう準正というものがあれば、国籍取得の意思表示が加わることによって国籍を与えようということで、身分行為そのものに国籍取得のいわば契機を与えるというものではないわけでございます。しかし、実質的には、そういう身分行為によって父または母を日本国民とする子供であるという実質には変わりがないという点に着目をいたしまして、血統主義の面からいっても、そういう条件がある場合に御本人が日本国籍を取得したいというのであれば日本国籍を取得する方が妥当ではないかという観点に立ったものでございます。

○中村(巖)委員 時間はまだ前でありますけれども、私、終わります。

○宮崎委員長 三浦隆君。

○三浦(隆)委員 初めに国籍と在日韓国人の法的地位に関連してお尋ねをしたいと思います。戦後在日韓国人の人が日本国籍を失い、そして韓国籍となったのはいつからだろうかという問題です。
 昭和二十七年四月十九日付、民事甲第四百三十八号法務府民事局長通達、すなわち「平和条約の発効に伴う朝鮮人、台湾人等に関する国籍及び戸籍事務の処理について」によれば、「朝鮮及び台湾は、平和条約発行の日すなわち昭和二十七年四月二十八日から日本国の領土から分離することとなるので、これに伴い、朝鮮人及び台湾人は内地に在住している者を含めてすべて日本の国籍を喪失する」というふうにありますが、こう解釈してよろしいでしょうか。

○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。平和条約発効によりまして日本国籍を喪失したと考えております。なお、そのような考え方は、最高裁判所の判例でもそのように考えられておるところでございます。

○三浦(隆)委員 昭和二十二年五月二日に公布、施行されました旧外国人登録令第十一条では「外国人とみなす」という規定が入っておりました。しかし昭和二十六年十一月の出入国管理令には外国人とみなすという条項がなかったわけであります。当時GHQが反対したと言っておりますが、それはなぜだったのでしょうか。また、とすれば現行法令上とは違いまして、当時の出入国管理令上は外国人とみなす規定がなかったので、その間とうなるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 外国人登録関係は所管でございませんのでよくわかりませんけれども、法律的なぎりぎりの考え方とすれば、平和条約発効のときに国籍を失ったんだけれども、ポツダム宣言受諾の問題もございますので、実際上の扱いとしては日本人なんだけれども外国人とみなすというふうなことがそこで表現されて、その間、その経緯の中ではいろいろなことがあったろうと思いますが、先ほども申しましたように、所管でございませんので、よく私は存じません。

○三浦(隆)委員 質問の趣意は、とにかく一般の外国人とは違って特殊な立場にその人たちがあったんだということです。
 そこで、いつか指紋のときにもお尋ねしたのですが、外国人と一律に言いましてもいろいろな立場があるはずでありますので、そういう歴史的な状況もやはり考慮しながらこれから考えた方がいいだろうということであります。
 その次には、朝鮮半島の人が日韓併合後、一方的に日本の国籍になって、敗戦ということで、そして平和条約を結んだということで、また一方的に日本人でなくなってしまったというふうなこと等を踏まえましてお尋ねをしたいと思うのです。
 といいますのは、戦争中日本の軍人となって日本に協力したということで、戦後戦犯の扱いを受けた朝鮮の人なり台湾の人なり、多くの方がいらしたわけです。その人たちからしますと、平和条約が発効したその時点では、いわゆる巣鴨プリズンには九百二十七人の戦犯が拘留されておりまして、その中に二十九人の朝鮮人と一人の台湾人も含まれていたと言われております。そこで、条約発効によって日本国民でないならば、日本国民としての戦犯に問われる必要はないんじゃないかというふうなことで訴訟が起こったわけです。
 すなわち、昭和二十七年の六月でありますが、平和条約発効と同時に日本国籍を喪失したので日本国民には該当しない、拘束を受けるべき法律根拠はないということで、人身保護法による釈放請求の裁判を東京地裁に起こしております。そしてその事件は、人身保護法の特例によりましてすぐに最高裁に渡っております。
 そして最高裁では、昭和二十七年の七月三十日ですか、その請求を認められないと判決を下しております。その理由は、「戦犯者として刑が科せられた当時日本国民であり、その後も引き続き平和条約発効の直前まで日本国民として拘禁されていた者に対しては、日本国は平和条約第一一条により刑の執行の義務を負い、平和条約発効後における国籍の喪失または変更は、右義務に影響を及ぼさない」ということであります。すなわち、戦争中は日本国民であったんだから、そうしたときの戦犯としての責任はとってもらわなければ困るということであります。
 ところが一方で、戦傷病者戦没者遺族等援護法その他の規定によりますと、もはや国籍は離れているから援護法の対象にはならないというふうになっているわけであります。としますと、この人たちというのは、罪はかぶりなさい、しかし補償はしてあげませんというふうなことでありまして、全く、戦犯のときは日本人、援護法では外国人というと、極めて日本の身勝手なんじゃないか、なぜ自分たちだけが被害を受けるのかというふうな思いを感じられるだろうと思うのですが、国籍の立場からどう理解したらよろしいのでしょうか。

○枇杷田政府委員 国籍の立場から申しますと、あくまでも平和条約によって日本国籍があったものがなくなるということで考えるほかはないと思いますが、その他、そういうことをめぐりまして、いろいろな法域の関係でそれをどういうふうに評価をするか、あるいは裁判の執行の問題としてどう評価をするかということはそれぞれの領域で御判断になることだろうと思います。その間に整合性があるかどうかという問題は出てこようかと思いますけれども、国籍法の立場から申しますと、これは平和条約によって、平和条約の前は日本人でそれから後は外国人ということに考えざるを得ないと思います。

○三浦(隆)委員 いまの答えは、日本としてはそれでいいんだと思うのですが、でも、無理やり日本人にさせられて、今度一方的にまた外国人になって、ですから、責任だけは負わされるわ、言うならば過酷な義務だけは課せられて、一方で、その後始末は何らしてもらうことができない。日本人が日本のために戦うのはむしろ当たり前だと思うのですが、そしてその日本人には多額の援護が今手厚くなされているのに、無理やり日本人にさせられて犠牲を受けた人には、法律上、日本は何の責任も負わないようになっているというところに多くの問題があると私は思うのです。そこに、いわゆる日韓関係などの国民感情その他大変微妙なところもそうしたところから出てきていると思うのです。ですから、繰り返しますが、前の指紋の問題のとき言いますように、一口に外国人と言っても、旧植民地支配下に無理やり置かれた人の場合と、アメリカ人その他の外国人とは私は違うだろうというふうに思っております。少なくとも日本人としての痛みを感じてしかるべきものだろうということであります。
 つきましては、その次ですが、植民地の分離に伴う国籍の処理というのは、何も日本と韓国だけの問題ではありませんで、第一次大戦、第二次大戦を踏まえて幾らでもケースがあるわけであります。
 たまたまその一つとして、イギリスの場合に、戦後多くの国が独立いたしましたけれども、そこでは一九四八年に制定されましたイギリスの国籍法によりますと、そうした旧植民地支配の人々には英連邦市民という特別な地位が与えられておったようであります。その関係が少なくとも一九六二年まで続きまして、そして旧植民地出身者が一
般外国人と同じように扱われたのは一九七一年のことだと言われております。そしてその間は、イギリスの本国と旧植民地の人々との間でたびたび話し合いが行われながら、国籍の処理がされてきたというふうに言われているわけです。
 また、ドイツの場合にも、オーストリアが独立いたしましたけれども、このケースが日本とは比較的近いケースだと言われてはおりますが、西ドイツでは、五六年の五月に特別立法が制定されたようでありまして、そこでは「オーストリア併合による「ドイツ国籍」の強制付与は、オーストリア独立の前日にすべて消滅すると定めるとともに、一方でドイツ領内に居住するオーストリア人」、日本的に言うならば在日朝鮮人は、「意思表示によりドイツ国籍を回復する権利を有すると定められて」いたと言います。すなわち、在独のオーストリア人には、その意思によってドイツ国籍取得の道を開いていたけれども、日本ではそうした在日朝鮮の人に対しての意思を全く問わなかったといういきさつがあるわけであります。
 この点は、日本の学説その他によりましても、まず大別二つあろうかと思うのですが、一つは、割譲地における住所を標準として国籍の変更を認める主義というのがあります。もう一つには、朝鮮人という種族ないし民族を標準として国籍の帰属を決定する主義というのがありますけれども、その学説のいずれをとるにしましても、日本に居住する朝鮮人に対しては、日本の国籍を選択する自由を認めなかったのはおかしかったのではないかという考え方が盛られているわけです。それでは、戦後、この国籍帰属のときに、どうしてイギリスやドイツや何か、あるいは日本の学説のように従わないで、一方的に日本からいわゆる韓国の人たちを打ち切ってしまったのだろうか、そして、その後の回復の余地をなぜ認めようとしないのでしょうか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

○枇杷田政府委員 ただいま御指摘のように、選択とかそのような特別な措置をしなかったわけでございますが、なぜそのようなことをしなかったかということについては、現在では私どもその理由はつまびらかにいたしておりません。ただ、ポツダム宣言受諾、それから平和条約発効という関係で、当然従来の朝鮮籍におられた方についての対人主権はなくなったという考え方から、何らの手当てもしないで、そして当然に在日であるかどうかを問わず、従来の朝鮮籍の方については日本国籍を失うという措置にしたのではなかろうかと思っております。

○三浦(隆)委員 今のお答えもそのとおりだろうと思うのですけれども、そうしたわゆる日本の法令あるいは日本の解釈の立場というものは、我々は一つも傷つかないのですが、先ほどのように、そういう解釈をすることによって韓国の人たちなり、いわゆる旧植民地支配で無理やり日本人とされて犠牲を受けた人々は救いようのない立場にあるのだということです。
 繰り返しますけれども、指紋の問題や何かが出たときも、我々は、もう過ぎてしまったことなんだと言いますけれども、戦争で犠牲を受けてけがをしたり亡くなった本人なり家族の人々にとって、現在まだ援護資金を何らもらえない人々にとって、そして状況によって本国に帰るに帰れない、日本でしか生活ができなくなっている人々に対して、その人々の痛みというものが少しでも理解できるような法でなければならないと思うし、と同時に、法の解釈、運用においてもそうすべきものだ。それを指紋の解釈その他、一方的に、とにかく外国人は外国人なんだ、特別な扱いはできないんだ、と。それだけですと、アメリカ人と旧植民地で苦労した人々とは、そういうときだけ全く同じになってしまう。これが極めておかしいと私は思うのですが、たまたま日本の政府、いわゆる指導的な立場にある人の見解は、そうでないというところで大きな隔たりがあると思います。
 私は、こうしたことから、日韓など、いわゆるもっともっと近い国、親しくならなければならないはずの人々の心の中にしこりが残ってくることが大変にいけないことだろう。これは韓国だけでない、その限りにおいては北朝鮮の人々でも言えることだし、あるいは台湾にいる人にも言えることだというふうに思いますので、今ここではともかくとしまして、将来の法改正なりあるいは改正法での法の運営の中で十分に御考慮をいただけるようにぜひ期待したいというふうに思っております。
 それからその次でありますが、これに関連しまして、北方領土在住の韓国人の人の中には、現在、ソ連籍も北朝鮮の籍も取らずに無国籍のままで、いつの日か日本なり韓国に戻れるのじゃないかという大変はかない希望を持って不自由な生活に耐えている人がいまだに多いというふうに伝えられているわけです。この人たちの韓国なり日本への帰化あるいは国籍の回復はどのようにしたら可能になるのか。たまたま北方領土へ墓参団というふうに出向く人たちもおりますけれども、そういう人たちを仲介として、何らか特例的な処置をとることができないのだろうかということに関してはいかがでしょうか。

○枇杷田政府委員 そのような方々の中で、日本の国籍を取得したいというお考えの方があれば帰化の申請をしていただくほかはないわけでございますが、現在の国籍法では、御承知のとおり日本における居住要件というものがございますので、日本の領土内に戻られまして、そこで生活が定着をするということになれば、そこでその帰化が許可になるということは十分にあり得ようと思います。

○三浦(隆)委員 これも今までと同じようなことでありまして、その多くは韓国の人だと言われておりますが、好きこのんで樺太なりその他いわゆる歯舞、色丹に行ったわけではないのでありまして、戦争中なりの日本の政策によって無理やり向こうに連れていかれたわけです。戦争を終わって、日本人だけは引き揚げてきたわけです。ところが、その人たちは置いてきぼりにしてしまったわけであります。ところが、置いてきぼりにされたって、その人たちも大変困るのでありまして、何とか戻りたいのでしょうけれども、戻るに戻れない状況にあるということです。やはりこれもかつての日本の大変大きな犠牲者だろうと私は思います。
 今回じように中国残留孤児にかかわる国籍、帰化の問題などが言われておりますが、たまたま出生証明その他、そんなことで郵送なりあるいは人を介して日本国籍なりを取得しようというふうな動きもあるやに聞いております。とするならば、同じような便法で、北方領土内に今なお無国籍のままでいるその人たちに日本へ来いと言ってもそれは来れないことでしょうから、しかし、我々日本人が向こうへ墓参団ということで行くことは可能だと思うのですね。ですから、中国残留孤児でなし得たと同じようなそういう便法的なものがそうした場所にいる人たちにも何とか適用の道がないものだろうかと思います。
 例えば墓参団などで現地に出向いた日本人が、日本にその人々が来たときは生活を保障するということで仲介に立ち、日本への帰化を行い得るようにするとか、あるいは韓国への国籍回復を図れるように日本なり韓国のしかるべき手段を通じて何とかその人たちを救うことはできないものかと思います。これらの人々は今やかなりの老齢に達していると思われるわけですから、一日も早く無国籍の状態からその人々の希望する国籍を得られるように日本として努力すべきでしょう。私は、日本の戦争に対する大きな責任として、償いとして何らかの国籍法上の考え方を示してもいいのじゃないかと思うのですが、もう一度御答弁いただけませんか。

○枇杷田政府委員 国籍法の面からとらえますと、うまい方法がちょっと見当たらないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、日本国籍の取得を希望されるならば、帰化によってということしかないわけでございます。中国残留孤児の場合には、もともと出生のときに日本国籍を取得しておるということでございますので、就籍その他の方法によって明らかにするという道があ
るわけでございますけれども、今おっしゃいましたケースにつきましては、ちょっと国籍法の範囲の中では帰化によるしかないのではなかろうかと思います。

○三浦(隆)委員 それでは、同じような考えで、出生のときに韓国籍を有した韓国の人の場合には、韓国に対してはそれができるのですね。しかし、日本ですらもソ連並びに北朝鮮との関係は大変微妙で難しいわけですから、韓国の人に至っては帰化なり国籍回復を図るなどということは現実的にはなおのことできないわけであります。しかし、中国残留孤児の場合の国籍回復の方法のような、今の答弁的なものをかりれば韓国への国籍回復は可能なんですから、何とか仲立ちをするなどの方法がとれないものでしょうか。
 少なくとも今国籍法を改正するかしないかが論議されているわけですから、この場合、一般外国人にと私は言っているわけじゃないのです。日本の国策により今なお悲劇的な状況下にある人々に対して、特例的に救済を行い得るよう、この法改正の中で特別に一条を加えてもよいと思います。たまたま日本が法を整備しても、ソ連なりの都合でその法というものが実効性がなかなかうまくいかないということはあるかもしれませんけれども、少なくとも日本はそういうふうにその人たちを迎える気持ちを持っておりますというふうなことだけでもこれは大変に違うと私は思うのです。今回の改正ではあるいは間に合わないかもしれませんが、将来の改正においてのそういう方向性、そういうお気持ちだけでもあるのかないのか、お聞かせいただけますか。

○枇杷田政府委員 いろいろ外交的な問題もございますので難しいことでございますが、国籍法ということになりますと、いわば憲法の附属法として非常に大きな原則を決める法律でございます。したがいまして、個々の事案に着目すると申しますか、そういう点について国籍法で取り上げるということは、ちょっと目下のところ考えておらないところでございます。

○三浦(隆)委員 日本の憲法が日本人に適用されるのは当然ではありますけれども、今言った方々は日本の都合でかつて日本国民としたことは事実なんですね、日本国民としたことは。そしてまたこの場合には、内地人、台湾の人とまた韓国の人とは扱いは、ちょっと国籍の適用は違いはあったようではありますけれども、しかし、いずれにしましても、国籍法を改正してその人々を特別に救済することは別に憲法違反になるということではないのですね。立法的にどうするかは、するかしないかは別ですが、憲法上は特段のことはなかろうというふうに思います。言うならば、法務省などがそういう決断を持つか持たないかということだと思います。あるいは法務省を越えて、日本政府はそういう人たちに対する責任の意識を持つか持たないかにかかっていると思いますので、時間もありますし、ぜひ御検討いただきたいとお願いして、先に進みます。
 この問題に比べますと、ちょっと次元が違ってくるのでありますけれども、北朝鮮在住のいわゆる日本人妻の問題についてであります。その人たちの国籍は現在どのようになっているのかということ。それからまた、その人たちが向こうに行って何年かたっている間に子供さんが生まれた場合に、その子供さんの国籍はどうなっているのか。あるいはまた、日本ではなくて北朝鮮に行ったということで、自己の志望によってではなくあるいは選択したわけでもなく仮に日本国籍を失っていくような場合には、どうなるのかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○枇杷田政府委員 いわゆる日本人妻ということでございますけれども、これは恐らく朝鮮人の男性の妻として向こうに渡られた方だろうと思います。我が国の国籍法におきましては、婚姻によるとかあるいは海外に定住するとかによって日本の国籍を失うということにはなっておりませんので、日本の国籍を持っておられた日本の女性の方はそのまま日本の国籍をずっとお持ちであると思います。
 また、その子供さんにつきましては、現行法では父系血統主義をとっておりますので、当然には日本の国籍を取得することはないわけでございますが、今度の改正法の附則の規定によりますと、二十年さかのぼっての関係では意思表示によって日本の国籍を取得することができますので、その範囲内に当たられる方は意思表示によって日本の国籍を取得することが可能であろうと思います。

○三浦(隆)委員 次に、今度の法改正によりまして在日外国人の子弟、殊に協定永住者の子弟の場合には、先ほども御質問があったようでありますが、重国籍者が大変にふえてくることになるだろうと思います。
 そこで、年間推定重国籍者数というのはどのくらいにふえていく予想が立つのか。また、日本国籍を取得し、その中で特に韓国籍など外国籍から離脱しようと思われるような推定数は年間どのくらいになるものだろうか。そして十年後、在日外国人という人たちの推定数はどのくらいが予想をされるものだろうか。何か試算的なものはございますか。

○枇杷田政府委員 在日韓国人の方が日本人と結婚されるというケースはかなりあるように聞いております。したがいまして、そういうことが行われますと、新法から申しますと、少なくとも日本人の女性が韓国人の男性と結婚して子供が生まれた場合には重国籍になるわけでございます。したがいまして、日本国籍を取得される方が多くなるわけでございますが、その数がどの程度かということははっきりした試算はございませんけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、父母両系主義になることによりましてふえていく重国籍者の数は大体一万人であろうというふうに考えております。
 その中で韓国との重国籍者の数ということになりますと、それもよくわかりませんが、半数近い方が韓国との重国籍者ではないかと思います。もし韓国の方でも父母両系主義を採用するということになりますと、またさらに重国籍の数がふえていくということになるわけでございます。これは、韓国でどのような立法をされるかは今後の問題でございますので、わかりません。
 そういうようなことで、将来、韓国人の血統を引かれる方々の中で日本国籍を持たれる方が多くなってこようかと思いますが、その中で韓国の国籍を離脱するあるいは日本国籍を離脱するというふうなことがどの程度行われるかということにつきましては、現時点ではちょっと予想がつきません。したがいまして、それについての推定数なども申し上げる根拠を持たないわけでございます。
 また同時に、十年後の在日外国人がどの程度の数になるかということも、これも御本人の意思によってどのような選択をするかということにもよるわけでございますので、目下のところ何とも推測のしょうがないというところでございます。

○三浦(隆)委員 現在、日本における全外国人がどのくらいであり、またその中でそうした韓国の人たちが何人であるかということは一応わかっておりますし、年間どのくらいの婚姻数があるかも大体わかっております。それから、配偶者として韓国人同士から次第に日本人との結婚数がふえていることも統計としてはだんだん明らかになってきていると思います。ですから、正確なことはわからないにしろ、その限りにおいては一応の推定はつくと思います。ただ、重国籍になった場合どちらを選択するかは、なってみなければわからないことだと思うのですが、一応日本語しか理解できないお子さんたちでございますと、一世の皆さんのお気持ちとはまた別に、特別日本国籍を取られる方がふえるのじゃないかという気がいたします。ただ、どちらかの国籍を選択しなければならないと言わないで、この際、韓国系日本人というのでしょうか、両方の国籍をそのまま、いわゆる重国籍のままでいることを認めるというふうな考え方は成り立ちませんか。

○枇杷田政府委員 これはたびたび話が出ておりますけれども、国籍唯一の原則というのが国籍法を考える上におきます重要な原則でございます。
したがいまして、重国籍はなるべく解消していきたいというのが私どもの考え方でございますので、韓国との関係だけに限って重国籍を認めるというふうなことはいたしかねるわけでございまして、原則どおり選択の宣言をするなり離脱をするなりというようなことによりましてどちらか一つの国籍にするようにしていただきたいというふうに考えます。

○三浦(隆)委員 日本とアメリカですと、国も違うので一律には言い切れないですが、アメリカの場合には重国籍に対してそれほど難しい枠組みを持っていないようであります。アメリカ合衆国移民及び国籍法の改正、一九七八年十一月二日でありますが、その第三百四十九条A項の五号というふうなものには、旧来、合衆国の市民が外国の選挙で投票権を行使した場合、合衆国市民権を喪失するというふうにあったわけです。ここでは重国籍を前提にしております。ただその上で、認めるけれども選挙権というふうな極めて公的色彩の強いようなそういうことまでいくのは行き過ぎであろうというふうな規定だったと思うのです。ところが、この規定に対しまして、ポーランド国民で合衆国に移住し帰化により合衆国市民権も持っておりますアフロイムという人がイスラエルで投票権を行使したため、この三百四十九条によりまして市民権を喪失してしまったわけです。ところが、これは違憲だとして提訴しまして一九六七年――失礼しました。先ほどのをちょっと手直しをいたします。アメリカ合衆国移民及び国籍法の改正されたのが一九七八年十一月二日でありまして、その根拠となりました先ほど読み上げました法文というのは、アフロイム事件の判決で最高裁がこれは違憲だというふうなことで無効にしてしまった。そこで最高裁の判決に従いまして法規が変わってきたわけであります。
 これは我々日本からすると大変なことだろうというふうに思います。例えば国内で重国籍を持っている人が出たとしまして、普通の市民生活を営むのは仮にともかくとしまして、あるいは公務員でもいろんな種類の公務員の方があろうと思うのですが、例えば国政に参画するような立場、そういう被選挙権を持つとか、あるいは選挙権を行使するというふうなことはなかなか難しいと我々は理解いたしますが、アメリカの場合はそれもいいじゃないかというふうに変わったわけです。アメリカ自身も禁止していたものが今やアメリカではよしとしたという一つの背景には、アメリカはたくさんの民族をもって成り立っているから仕方がないという考え方とともどもに、世界的な流れとして今開かれた流れに来ているのかなという感じもしないではありません。そういうふうなことも踏まえて、今の日本でということではありませんが、将来的な課題として開かれた、国際化されている日本にふさわしいような、そうした検討もおいおいする時期が来たのかなというふうに思います。
 そこで、このアフロイム事件についてもし御意見でもあれば聞かしていただきたいと思います。

○枇杷田政府委員 ただいまお話しになりましたような事件、それからアメリカの法律の考え方などについては私どもも承知いたしておりますが、アメリカは今お話ございましたように移民受け入れ国でございまして、多数の国の移民を受け入れて国を成立されたというところから重国籍というものを否定しては成り立たないというような要素がございますので、そういうことが比較的とりやすかったのではなかろうかとは思いますが、しかし我が国におきましては、そういう考え方は従来からもとられておらないところでございますし、今後重国籍者がどうしても残るような場合にどのようなことまでが許容できるかということについては議論が今後もなされるだろうと思います。今度の改正法律案につきましても、日本の国籍を選択する旨の宣言をした場合、なお重国籍のままに残っておる者が外国の公務などに自分の意思でついたという場合の措置なども規定いたしておりますけれども、そういうふうなことが実際上、運用上どうなるかというような点についても先ほどお話しのような点が考え方を固める上にも一つの参考になろうかとは思います。〇三浦(隆)委員 我が国でも、やむない状況からにせよ重国籍でありますと、一つの論議としては今言った参政権の問題があろうと思いますし、また就職の際に、例えば国籍を書くとき普通は日本なら日本だけで済むのに重国籍だと二つ書かなくてはならないものかとか、あるいはその際に二つ書くところ一つ書いたら履歴書は詐称といわれるべきものなのかどうか、あるいは鉱業法におきます鉱業権のように日本国民に限定する法律などもあると思うのですけれども、そうしたような場合に二つ持っていればどちらも使い分けができるというか、そういうふうなことでは重国籍の方が単一国籍所有者よりも有利なのかなというふうな気もしないではありません。また同時に、権利の主張があれば国によっては兵役の義務が課せられる、国民の義務が課せられたときに大変複雑な問題も起こるかなとか、特に忠誠義務なんというのを規定した場合には大変難しいと思いますね。それから、日本の場合でも特に公務員の就任について、外務公務員というのは特別法で禁じられておりますが、他の一般の公務員には別段禁止規定はないのだろうと思いますね。そうしたケースはどう考えていくか。特に、単純に外国人でなくて日本と外国と二つの国籍を持っているような場合には、極端に言うと外国人ではだめであっても日本人としてならいいとか、そういうふうな関係もあるいは、今現にあるのを私知りませんが、これから起こるかもしれない。重国籍がふえた場合問題があると思います。
 では、次に質問を進めまして、台湾系中国人が現在無国籍となっている場合、個人的ではありませんで、その理由及び推定数並びに帰化をする場合の取り扱いというのはどのようにしたらよろしいのでしょうか。

○枇杷田政府委員 いわゆる中国系の無国籍で在日しておられる方の数ははっきり私どもはつかんでおりませんけれども、千数百人程度おられるのではなかろうかと思います。そのような方々は日本の国籍法上は外国人でございますので、日本に住居を持っておられまして、そして国籍法で定める条件を備えておられます場合には、法務大臣の許可によって帰化する道が開かれておるわけでございますし、現に今までもかなりの方が帰化されておられると思います。〇三浦(隆)委員 次は、個々の法文の解釈をめぐって、細かいことですが、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
 第五条第一項の四号でありますが、旧来「独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること。」とありましたが、今回「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。」このように変わりました。これはいわゆる生活能力というか経済条件の緩和規定だと思います。
 で、この規定は、資産が余りないと、確かに日本に来てすぐ生活保護云々ということでは困るかと思うので、恐らくそういう配慮かと思いますが、これは資産の下限を決めたものだと思いますので、そしてしかもその下限を改正によって条件を緩和しようとしたわけですから、帰化の際には、資産がないというか少な過ぎることは問題であるけれども、豊富であるということは帰化のときの妨げにはならないと思うのですが、どうでしょうか。

○枇杷田政府委員 おっしゃるとおり、この要件に当たる生計を一にする世帯全体で生計を営むことができれば条件は満たすわけでございまして、それ以上資産があるということは、むしろ一般的にいいますと好ましいことであって妨げになる理由にはならないと思います。〇三浦(隆)委員 次は、第五条の二項でありますが、「外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合」とありますが、これは具体的にはどういうことでしょうか。

○枇杷田政府委員 例えば、ある国では外国の国籍を志望によって取得した場合に当然に国籍を喪
失するというのではなくて、その後に離脱の手続をとることによって初めて離脱を認めるという国がございます。そのような国の国籍を持っておられる外国の方が日本に帰化されようとしますと、一般的な要件、新しい法律で申しますと五条の一項の五号でございますけれども、この要件に当たらないということになります。ただしかし、日本の方の帰化が先に与えられますと、その国では当然といいますか、簡単な手続で当該外国の国籍を喪失できるという場合に、その食い違いのためにだけ帰化を認めないというのは酷な場合があるだろう、そういう場合が一つでございます。
 それからもう一つ、難民などのような場合に、形式的と申しますか、その国籍はあるわけでございますけれども、ただ、それが実効性がないと申しますか、そしてまた難民のような場合にはその国の国籍の離脱手続を実際上とることができないというようなこともございます。そういうような場合に、総合的に考えまして帰化を許可をするという道をここでつけたというのがこの改正の趣旨でございます。

○三浦(隆)委員 以下、改正法でありますので、コンメンタール的にお尋ねいたします。
 同じ第二項の中で「特別の事情」と書いてございますが、「特別の事情があると認めるとき」というその「特別の事情」とは具体的にどういうことでしょう。

○枇杷田政府委員 これは、先ほど申しました五条一項五号の重国籍防止条件というのは、条件としてもかなり重要な条件でございます。したがいまして、ただ先ほどお話が出ました「その意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合」というだけで単純に重国籍防止条件を免税するというわけにはいかないのでありまして、それにはやはり特別に日本の国との間の結びつきが強い、例えば日本国民との親族関係があるとかいうような場合であるとか、またはその境遇が、先ほど申しました難民等のような場合に、日本のほかには行くところがなく、日本で定住したいというような、そういう特別な事情があるというときに重国籍防止条件がなくてもこれを認めるという意味で、そういうような特別の事情をここに掲げておるわけでございます。

○三浦(隆)委員 次は、第八条の四号でありますが、これも新設の規定であります。「日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの」こうありますが、この規定は日本生まれの無国籍者に優先的に帰化への道を広げていったものと理解してよろしいのでしょうか。

○枇杷田政府委員 これは、国籍法を考える一つの原則として、無国籍者をなるべくなくそう、人権規約などにもありますけれども、なるべくどこかの国の国籍を子供に与えたいという思想があります。そういうものを受けましてつくった規定でございますが、これはどういうことかと申しますと、日本で生まれた子供である、しかし、日本の国籍法では日本で生まれたことによって日本の国籍が直ちに与えられるものではございません。生地主義の国であるという方が両親で日本に来て子供さんを生んだという場合に、生地主義の国の場合には外国で生んだ子供さんについては与えないというふうなことで、そういうはざまから日本で生まれた子供さんでどこの国の国籍も取得しないということが、これはまれでございますけれども出てまいります。そういう方でも、血統的には日本とは関係ないわけでございますけれども、日本に引き続き三年以上住所を有するような方については、もし日本の国籍を取得したいというならば帰化を認めることによりまして、無国籍の方をそういう地縁によって解消したいということがこの規定のねらいでございます。

○三浦(隆)委員 無国籍者を少しでも少なくしたいという趣旨、そして特に日本で生まれたことでございますから大変いいことだなというふうに思います。
 その次に第九条でありますが、これはこれまでもあったのですけれども、「日本に特別の功労のある外国人については」云々と書いてありますが、「日本に特別の功労のある外国人」の「特別の功労」というのは、具体的にどのようなことでしょうか。

○枇杷田政府委員 この規定は現行法にもある規定でございますけれども、実はいまだこの規定によりまして帰化をされた方は例がございませんので具体的な適用例がないわけでございますけれども、一般的な原則、新法で申しますと第五条に掲げられております要件がなくても、これはもう日本に特別の功労があったわけだから、例えば住所要件が仮に欠けておるというような方につきましても、これは御本人が希望されるならば帰化を認める、そういう道があってもいいではないかということで設けられたものだろうと思います。したがいまして、要するに通常の五条の要件というものをいわば考えなくてもいいような、そういう特別のというようなニュアンスでこの条文は読むことになるのではないかと思います。

○三浦(隆)委員 次に、第十一条二項についてお尋ねをいたします。
 「その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。」という規定と第十三条一項「法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を離脱することができる。」とあります。大変よく似ているようでありますが、その規定の違いはどこにあるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 十三条の離脱の方は、重国籍者の方が日本の方に向かって日本の国籍を離脱するという場合の規定でございます。十一条二項は、我が国と同じような国籍選択の制度を持っている国があるといった場合に、その国の国籍と日本の国籍の両方を持っておられる方が外国の方の国籍を選択した場合には日本の国籍を失う。要するに、アクションの起こし方が十三条の場合には日本の方に向けての意思表示であり、十一条は外国の方に向けての意思表示ということが違いだろうと思います。

○三浦(隆)委員 これは、例えば日本とイタリアの重国籍者のような場合に、イタリアの国でイタリアの国籍を選択すれば自動的に日本国籍を失う、しかし、十三条一項でやってもよろしいということですね。
 それでは、次は第十二条との関連なんですが、「出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは」というのが改正法案です。現行法は「外国で生れたことによってその国の国籍を取得した日本国民は」とあります。これも大変紛らわしい規定でありますので、ひとつ解説をお願いしたいと思います。

○枇杷田政府委員 現行法は「外国で生れたことによって」ということでございますので、その生まれた国が生地主義をとっておる、そのことによって「その国の国籍を取得した日本国民」ということでございます。第十二条の方は「出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたもの」という表現でございますので、その出生によって外国の国籍を取得したその原因が生地主義によるものだけではなくて、その出生ということで血統主義によっても外国の国籍を取得するという場合も含むことになります。したがいまして、九条の場合よりは新法の十二条の方が範囲が広くなるということでございます。

○三浦(隆)委員 アメリカとかブラジルなどのいわゆる生地主義だけを考えておったけれども、今度はすべての国を含むようにしてあるという理解でいいですね。
 その次の質問は、第十三条であります。第十三条には、「法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を離脱することができる。」とあるのですが、法務大臣への届け出が困難な場合、これの代替的方法としてはどう考えたらよろしいのでしょうか。

○枇杷田政府委員 最終的には法務大臣のところにその離脱の意思表示が到達しませんと離脱の効果は認めることはできないわけでございますが、実際問題といたしますと、この離脱の届け出につきましては在外公館を通じてすることもできます
ので、そういう意味では直接法務大臣に届け出る必要はないということになろうかと思います。〇三浦(隆)委員 そうすると、外国にいる場合には在外公館でも構わないという理解ですね。
 今度は、北朝鮮のように在外公館を持ち得ない人のような場合、代替的な手段として現実的にはどうかなとは思いますが、訪朝した人々に託すとか、向こうの方から日本へ郵送で依頼するとか、そういうことも可能になりますか。

○枇杷田政府委員 法務大臣のところに意思が明確に届けばいいわけでございますが、ただ、それが御本人の確たる意思であるかどうかということがどうやって担保されるかという問題になろうかと思います。その担保の方法がとられましたならば、今おっしゃったような方法によっても可能ではなかろうかと思います。

○三浦(隆)委員 国籍の選択の問題についてお尋ねいたします。
 先に十四条二項の問題でありますが、「戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言をする」とありますが、仮に宣言をしても、重国籍のもう一方の相手方がこれを認めないような場合、これはどういうことになりますか。

○枇杷田政府委員 このような宣言をいたしましても、それは日本の国に対する意思表示でございますので、当然に外国に対する関係では効力を及ぼさないことになります。ただ、当該外国の方で我が国の新法の十一条二項のような規定を設けておりますと、そこでその外国の国籍の方がなくなるという関係には立とうかと思います。そうでないと、この宣言をしたからといって外国の方の国籍が直ちになくなるというものではないと思います。したがいまして、この宣言をしただけでは重国籍という者が残ることがかなりあろうかと思います。

○三浦(隆)委員 次は、第十五条三項後段のただし書きに「その責めに帰することができない事由」とあるのですが、例えば在外公館に遠いところに住んでいるとか、届け出書が何らかの理由で郵送中に紛失してしまった、あるいは外国に行ったばかりで手続に疎いとか、考えられるのですが、そのほかにもどんなことがあるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 このただし書きの「その責めに帰することができない事由」というのは、天災を例示に挙げているわけでございますが、御本人が病気で入院中であったとかいうようなことがあるわけでございます。要するに、客観的に見てその間に手続をとることができない、その手続をすることが期待できないような事由があればこれに当たることになろうと思います。

○三浦(隆)委員 同じく第十五条三項後段のただし書きに「その選択をすることができるに至った時」とありますが、これはどういうことでしょうか。

○枇杷田政府委員 それはただいま申し上げました、要するに選択の手続をすることができない事情がやんだときということでございます。例えば入院した場合には、退院してその手続ができるように動けるようになったときということでございます。天災などの場合には、天災がやんで交通事情が回復するとかいうようなことでございまして、前に申しました「その責めに帰することができない事由」がやんだときというふうになろうかと思います。

○三浦(隆)委員 次は、第十六条一項でありますけれども、「選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。」何か当たり前のような気もするのですが、特段の意味があるのでしょうか。

○枇杷田政府委員 これは、日本の国籍の選択の宣言ということの中身が日本の国籍だけにするという意思を表明したわけでございますから、したがいまして、それを外国との関係できれいにすることが当然内容に含まれているわけでございますので、それをここで改めて書いたわけでございます。
 しかし、これは外国の国籍法の内容によっては単純にできない場合もございますので、「努めなければならない。」と、要するに宣言に沿った行為をすることをここで訓示的に求めているわけでございます。

○三浦(隆)委員 時間で、最後になりましたが、また初めに戻ります。
 第三条、「二十歳未満のもの」とありますが、これにつきまして、二十歳以上の者の場合、国籍取得に対する特別な考慮というのはあり得るでしょうか。

○枇杷田政府委員 二十歳以上になられました方につきましては帰化の手続ということになりますが、これはもう既に準正で日本人の子ということになるわけでございますので、簡易帰化の手続によるということになります。

○三浦(隆)委員 質問を終わります。

○宮崎委員長 野間友一君。

○野間委員 国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。
 今回の法の改正ですが、これは私も婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約の批准、それに伴う国内法の改正ということを常に求めて今までやってきた者の一人として、その一部としての国内法の整備ができたということは大変うれしく思っておりますが、先ほどからも論議されましたように、中身についてはいろいろな問題と申しますか、それぞれの意見が出ておることは御案内のとおりであります。
 きょうは初日でございますので、基本的な点あるいは逐条的な中身についてひとつ明らかにしていただきたいというふうに思いまして、そういう立場から質問をしたいと思います。
 まず最初に、国籍とは一体何なのか、この概念規定、そこからお聞きしたいと思います。

○枇杷田政府委員 国籍というのは国家と国民とを結びつける法律的な関係あるいは法律的な地位というふうに定義づけられておりまして、また実質的な面から国家と人間とを結びつけるひもとか帯とかいうような形で定義づける方もおられます。

○野間委員 国籍を持つことあるいは国籍を取得することは、憲法上は権利として位置づけていいと思いますが、いかがでしょうか。

○枇杷田政府委員 権利といいますと、何か請求権的な意味での権利ということになりますとこれは問題があろうかと思います。ただ、日本の国で生まれて日本の民族といいますか、そういう血を引いている方にとってみれば、ある一つの、日本の国民としての一員に加えてほしいというような気持ちが出てくる、それを尊重するというような形での関係はあろうかと思いますが、請求権的な意味での権利というような対象になるものではないだろうと思います。

○野間委員 国籍と戸籍との関係ですが、一体戸籍とは国籍との関係で何なのか、お答えいただきたいと思います。

○枇杷田政府委員 戸籍と申しますのは日本国民の身分関係を登録、公証する制度でございまして、そういう意味合いにおきまして、日本国民というのは日本国籍を有する者でございますので、日本国籍を有する者が戸籍に登載をされるという関係になろうかと思います。

○野間委員 国籍の権利性ということを今聞いたのですが、これは憲法典の中の国民の権利及び義務、この最初の条文、十条に「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」というのがありますね。ですから、これはやはり基本的人権の一つじゃなかろうかと思うのですが、そういうことじゃないのですか。

○枇杷田政府委員 日本国籍を有している者につきまして、その国籍を奪うかどうかという局面でとらえる場合には、一つの基本的な権利に該当するようなそういう考え方で見られるべき性質のものであろうかと思います。

○野間委員 この法で言う「日本国民」あるいは「日本人」、この使い分けというのは何か理由があるのですか、どうなんですか。

○枇杷田政府委員 「日本人」と書きましても、
「日本国民」という表現をしましても、同じく日本国籍を有する者という点について概念は同じでございます。ただ、各法律によりまして「日本国民」というふうに表現をする法律もございますし、「日本人」という表現を使うところもございますので、そういう関係でその法律、法律に合わせた言葉の使い分けをしておるわけでございます。

○野間委員 国籍法では「日本国民」という表現がありますね。戸籍法では「日本人」になっていますね。これは何かそういう使い分けをする理由があるのですか、単に体裁の上だけの問題ですか。

○枇杷田政府委員 これはどちらかに統一をしてもいいものであろうと思いますが、現行法の上で国籍法は「日本国民」という言葉を使い、戸籍法は「日本人」というふうな言葉を使っております。現行の戸籍法が現行の国籍法よりも前につくられました。そういうことで「日本人」という言葉を使ったのではなかろうかと思います。今度の改正がおのおのの法律の一部の改正でございますので、ほかの字句と合わせまして「日本国民」とか「日本人」とかというふうに、それぞれの法律で既に使っている言葉に合わせただけでございまして、それ以上の意味はございません。

○野間委員 ところが、「外国人」というのは、これは国籍法も戸籍法もひとしくそういう用語を使っておるわけですね。だから、日本人に対して外国人というならともかくとして、これは法体系の中でそういうスタイル、「日本人」とか「日本国民」、いろいろなそういう使い方というか使い分けをしておるのがたくさんあるのですか。

○枇杷田政府委員 一つ一つ私記憶しておりませんけれども、いろいろな使い方をしているように思います。
 なお、ただいま「外国人」という言葉のお話がございましたけれども、これを日本国民に合わせまして外国国民と言ってもいいような感じはするわけでございますけれども、ただ、無国籍の方がございますので、そういうことを避けて言うためには「外国人」という表現を使うほかはないだろうということでございます。

○野間委員 午前中にも出ましたが、国籍唯一の原則、一人が一つの国籍、二つ以上持つべからず、こういう原則はいつごろ、国際的にどういうような機関で確立したものか。いかがですか。

○枇杷田政府委員 これは歴史的にはっきりいたしませんけれども、非常に王権の強いような時代におきましては、むしろ国民は王に対して、忠誠を誓うという関係でございますので、したがって、それ以外の関係を持つことは許さないというふうな関係が強かったろうと思います。そういうふうなことがずっと尾を引いていると思いますけれども、殊に先ほどもお話が出ていますが、一九三〇年のハーグ条約ができた理由といたしまして、第一次世界大戦の際にヨーロッパ各国での二重国籍を有する者の間のいろいろな兵役その他、戦争という特殊な緊張状態の中で問題になったというふうなことから、むしろ国の側ばかりでなくて本人の側から、両方の側からして国籍というものは唯一のものでなければならないという考え方が強く出てきたといずことではなかろうかと思います。

○野間委員 これもまた午前中も論議がありましたが、いわゆる父母両系主義は、特に条約の調印なり批准に伴って各国も昨今大変整備を進めておるのですが、その中で二重国籍回避の手だては、それぞれの国の法制度の中ではいろいろな形態があると思いますが、日本のように選択制をとっておる国はどのくらいあるのですか。わかれば国名も挙げて説明してほしいと思います。

○枇杷田政府委員 まだその立法作業中の国もございますけれども、現段階で選択制度をとっているのがイタリアとかブラジルとか、そういうような国がとっているというふうに承知いたしております。

○野間委員 こういう国籍の選択制という制度をとっていなくて別の方法で二重国籍をチェックしているというような国及びその法制度は、そういうところでは一体どういうようなことをやっておるのか、聞かしてほしいと思います。

○枇杷田政府委員 これはいろいろなところがございますけれども、外国に長くいる場合には国籍を失うような措置をとるとかというような形で重国籍をなくすというところもございます。それから、重国籍をそのままにしておいて、そして実際上抵触が問題になるような事案をその具体的な問題について協定で解消するように努めるとか、そういうようないろいろな考え方をとっておるわけでございます。

○野間委員 国籍の選択制度というのは、とにかく甲か乙かと、それでその選択をしない場合にはなくしていくという国家の一つの行為によっていわば終わってしまう、そういう効果を持つわけですね。そういう強権的なものがいいのかどうかということがいろいろ論議をされておるわけで、むしろそういう点で国籍離脱の自由という観点から、この二重国籍回避の措置としてこれ以上は強制しないという国が随分あるやに聞いておりますが、世界の中で、こういう国籍選択というようなことで国家の行為でどちらかに決めるというようなところは、数というかそのウエートが高いのかどうか、その点はどうなんですか。

○枇杷田政府委員 これは先ほど申し上げましたように、選択制度というものをそのままの形でとっておる国は、数としては現在のところそれほど多くはございません。ただ、ヨーロッパ理事会におきまして、閣僚評議会で選択制度を採用することがいいというような決議もいたしておりますので、それに従ってイタリアなどもそういう制度をとっておりますし、それからまた、今後国籍法を改正しようという作業をする国におきましては、そういうふうなことを採用していく可能性もあるのではなかろうか。私どもとしますと、我が国がとっておるような選択制度というようなものが各国でも多くなりますと、それによって自動的に重国籍が解消されるということになって望ましいという感じはしておりますけれども、今後どの程度選択制度というものを採用する国がふえるか、これは今のところ未知数でございます。

○野間委員 それから、重国籍のメリット、デメリットということ、特にメリットは、先ほども言われたのですが、例えば外国へ旅行なり渡航する場合のパスポートの問題等々というような話もあったと思うのです。デメリットの問題については、いわゆる忠誠義務の問題とかあるいは兵役義務、こういう点で問題になるやにいろいろな物の本には書いてあるのですが、外交保護権の問題について、一九三〇年のハーグの条約、これがありますが、日本は批准しておりませんが、これに基づいて保護権の行使があったというような例が、実際今まで扱いはあるのですか、どうなんですか。

○枇杷田政府委員 我が国との関係におきましてそのようなことが問題になったという例は聞いておりません。

○野間委員 そうしますと、どこかほかの国の間においてそういうのが幾つか例はあるのですか。

○枇杷田政府委員 ちょっと事案は定かではないのでございますけれども、国際司法裁判所でそういう二重国籍の場合の外交保護権の問題が取り上げられたということがあるということは聞いております。

○野間委員 そうしますと、確認ですが、二重国籍を持った人、日本におるのに外国から外交保護権を使ったというケースは今まで全くないということですね。

○枇杷田政府委員 外務省に聞かないとはっきりしたことはわかりませんけれども、そういう日本の国籍と外国の国籍とを持っている者についての外交保護権のことが日本の国に対してなされたということも私どもは聞いておりません。

○野間委員 未発効のものですが、忠誠義務に関連して、二重国籍のある場合における軍事的義務に関する議定書というのがありますね。これは忠誠義務との関係で一体どうなりますか。

○枇杷田政府委員 その点については大変難しい問題でございまして、本人にとりましてもかなり苦しい立場に追い込まれることがあろうと思いますが、しかし、それをある程度の線で割り切ると
いうために、常住するといいますか、そういう実効性のある外見を持つ国の方が優先して兵役の関係を処理するというようなことであろうかと思います。

○野間委員 デメリットと申しますか、特に成人に達した以降、忠誠義務、特に兵役の義務ですね、それと外交保護権の問題を言われるわけですが、今までもかなり重国籍の方がおったのですが、こういう点でも過去一切問題になったケースはないんだというふうに理解していいんですね。

○枇杷田政府委員 外務省あたりで問題になったことがあるかもしれませんけれども、私どもの知る範囲内では、そのようなことがあったということは聞いておりません。

○野間委員 こういうのが出てくるのは、特に外国籍の放棄宣言をした。ところが、外国の法制度の中で、無条件に国籍の離脱を認めないという国との関係でこれからやはり出てくると思うのですが、今時に韓国の問題も出ておったと思いますが、無条件に国籍の離脱を認めない国というのは世界にかなり数が多いのですか、どうですか。

○枇杷田政府委員 無条件で離脱を認めないという国は、数字的にはちょっと把握しておりませんけれども、かなり多いというふうに思います。

○野間委員 政府の許可制度にかからせるとか、あるいは兵役義務が終わった後とか、そういうのがあるように思うのですけれども、そういう点で、これからあるのかないのか、これは実態はともかくとしても、こういう法制度の建前からすれば、それに対応する手だてが必要ではなかろうかというふうに思うのですが、これは外務省ではないのでどうかと思いますが、やはり外交上の措置、例えば国際的な協定を結ぶとか、あるいは二国間の取り決めを結ぶとか、そういうような努力がこれからとられてしかるべきではないかと私は思います。これは法制審なり、あるいは法務省の部内でもいいんですが、論議なり討議の中でそういうものは出ておらぬのですか、どうですか。また、これについて、法務大臣も、国務大臣ですからね、やはり外交上の問題についてこういう点で十分考えて措置をする必要があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。

○枇杷田政府委員 一番理想的に申しますと、世界全体で共通の国籍法ができるということが理想でございます。しかし、それは実際問題としてできないわけでございますので、なるべく協定とか条約によって、二重国籍とかの抵触がない、あるいは無国籍者が生ずる谷間ができないようにするということが望ましいわけでございます。したがいまして、ヨーロッパの関係諸国においてはそういうような協定を結んでおるところもあるやに聞いておりますが、ただ、我が国の場合に、どういう国とどういう協定を結ぶべきかということになるとなかなか難しい問題がございます。こういう条約とか協定とかというのは、具体的な問題が起きるのを契機とするようなことも多いようでございますので、将来各国がどういうふうな立法をしていくかということを見定めながら、必要があればそういう協定を結ぶという働きかけをすることが必要になる場面も出てこようかとは思います。(野間委員「法務大臣いかがですか」と呼ぶ)

○住国務大臣 これは国際関係は国家間の問題としても大変デリケートだと思うのですが、そういうようなこともあって、例えばヨーロッパ諸国あたりは閣僚理事会あたりでこの問題を真剣に議論をしておる。そしてそういう衝突の芽を未然に防止しておこう、こういうような考え方でそういうことをやっておるのだろうと思うのです。これは扱い方をちょっと間違うと大変なことになる。そういう意味で、これは外交関係ということになるわけでございますので、日本としてもそういう問題が起こらないようにいろいろ手当てを考えておく。二国間でやるのかあるいは国際条約でそういう方向へ持っていくのか、これはいろいろやり方があると思うのでございますが、そういうことがこれから必要になってくるのじゃないかなと私は思っております。

○野間委員 これももう既に出てましたが、韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国ですね。特に韓国の場合には、日本に永住権と申しますか、永住をしておる者については兵役の免除というのがあるようですね。ただ、永住というのは一体どういうことなのかということで稲葉先生の方からもいろいろと論議がなされておりましたが、特に近隣諸国とのトラブルがぜひ起こらないようにやはり明確に法の改正の中で国際的な整備をする、そういう必要が特にあるのじゃないかというふうに私は思いましたので、その点お聞きしたわけです。
 ちょっと条文の中身について、若干逐条的になるかもわかりませんが、お尋ねしておきたいと思います。
 まず三条の「準正による国籍の取得」でありますが、これは二十歳未満ということで、未成年に限定されておるわけですね。この理由。あるいは、「(日本国民であった者を除く。)」とわざわざ括弧の中にこれが書かれておるのはなぜかということと、それから「出生の時に日本国民であった場合において、その父又は母が現に日本国民であるとき」という規定がありますが、これは、生まれたときに国民であれば現に国民でなくても継続性は問わないということが三条の中では読み取れると思うのですが、それはそういう解釈でいいのかどうか。

○枇杷田政府委員 それはただいまお話しのとおりでございまして、今、中間が切れてもいい、そういうケースはまれであろうと思いますけれども、中間は切れてもいいという考えでございます。
 二十歳未満ということに限定いたしましたのは、二十歳を超えますと一般的に外国人として社会生活を既に営み始めているという実際がございますので、個別に帰化の手続によって判断をするのが適当であろうということでございます。また、こういうケースの場合に、準正になりますと、その時点からは日本人の子ということになって簡易帰化の手続によることになるわけでございますので、二十歳に達するまでにそのような積極的な日本の国民の希望がある者は帰化によって日本国籍を取得している場合も多いであろうというようなことも背景としては考えておるところでございます。
 それから、「(日本国民であった者を除く。)」というのは、かつて日本国民であったのになくなったという意味は、これは志望によって外国の国籍を取得したか、あるいは二重国籍であって離脱の手続を日本の国籍についてしたかというケースでございます。そのように積極的に外国の方に向かっての行為をしたという方については、これは簡易なといいますか、意思表示だけで日本国籍を取得させることは適当でないという要素があるのじゃないかということによるものでございます。

○野間委員 きょうはそういうふうにその点についてはお聞きしておきたいと思います。
 五条の帰化条件の問題で、特に一項四号の生計要件の問題、これは確かに大変緩和されたということで、これは前進面を評価するのですが、この「配偶者その他の親族」、これはもちろん配偶者だけでもいいし、配偶者だけでは足りない場合にはその他の親族の資産等をトータルして判断するのだというような趣旨ですか。

○枇杷田政府委員 これは生計を一にする単位で考えておるわけでございまして、その中では配偶者、親族、また自分、そういうものをトータルして考えるということでございます。

○野間委員 そうしますと、生計を一にしておれば、配偶者だけではいわば資産、技能ではもう一つだけれども、親族も合わせれば要件は充足するのだというような考え方でいいわけですか。

○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。

○野間委員 それから、二項の問題、「その意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合」、これはいわゆる離脱の点で非常に障害があるケースだと思いますが、「親族関係又は境遇につき特別の事情がある」というふうになっていますが、この二項を置かれた理由と同時に、「親族関係又は境遇につき特別の事情」、これは一体どういうような中身になるのか。と同時に、「又は」という
のがありますね。これはまさに「又は」でオアという意味に解していいのか。
 それからもう一つは、この場合当然重国籍者になると思うのですよ。そうなりましたら、それはそれでいいのでしょうか。それと同時に、今度は、重国籍者ですから、十四条との関係は一体どういうことになるのか。ちょっとわかりにくいものですから……。

○枇杷田政府委員 「外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない」というのは、先ほど御指摘になったとおりでございます。そして、そういう場合でありましても常にというわけではございませんので、例えば日本国民の子供であるとか、あるいは境遇というのは、先ほどもちょっと申しました、例えて言いますと難民であるとか、そういうような境遇にあるという、そういう特別な事情がある場合には、これは重国籍防止条件である第一項五号の要件がなくても許可することができるということで道を広げたわけでございます。ただ、こうやりますと、重国籍の防止条件を満たしておりませんので、日本の国籍を帰化によって取得するのに、なお外国の国籍もあわせて持つという状態が残ります。
 したがいまして、十四条の関係では、その取得した時点が二十歳に満たないときであるときには二十二歳までに、それから二十歳を超えている場合には取得したときから二年以内に選択をしていただくということになります。そして、十六条の関係の一項で申しますと、要するに日本に帰化した後ならば離脱の手続ができるというような外国の法制になっている場合にはその手続をするように努めていただきますということで、あとは一般の重国籍と同じような関係に立つことになるわけでございます。

○野間委員 この場合には、国際的な関係というのはそう心配しなくていいのですか、どうなんですか。その二項との関係ですね。

○枇杷田政府委員 これは特にそのことによって国際的な問題が起こるということは余り予想されないところでございます。各国でどのような場合に帰化を認めるかというのは各国の主権に任されているところでございますので、特に国際的な問題になることはないのではないかと思います。

○野間委員 七条のこの簡易帰化、特に配偶者の場合の要件ですが、三年以上ということ。今度は夫の場合も妻の場合も同じにされたと思いますが、私たちが既に法案要綱を出しておりますし、また各運動団体の方々の意見もこれあり、三年以上というのは非常に長いんじゃないか。特に配偶者の場合ですね、妻にとってはこれが三年というふうにされるわけだし、どっちにしても三年というのは非常に長いんじゃないかというふうに私たちは思っておるのです。私どもの案では一年以上というふうにしておったのですが、実際にこういう帰化条件に合うのか合わないのかということは、それはそれなりに調査と申しますか判断する期間が必要だということかもわかりませんが、これについて実務家等の話を聞きましても、一年以上あれば十分調査可能なんだ、こういうことを言われております。
 特に後段の「日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し」云々と、この場合には一年でいいわけでしょう。これは恐らく婚姻関係のそういうウエートが前提となっておることは間違いないと思いますが、しかし、それはそれとしても、その調査という観点からすれば別にそんな三年ということでなくても一年以上でいいんじゃないかというふうに私は思うのですが、どうなんですか。

○枇杷田政府委員 現行法でも同じでございますけれども、この配偶者の居住要件というものは、日本に同化をしている程度を最少限度居住何年というメルクマールで見ようということだろうと思います。そういう面で考えますと、一般よりはかなり短くて、三年ぐらい日本に居住している者ならば婚姻後直ちの者でもいいという要素が出てくるのだ、殊に、日本人と婚姻をするという身分関係によって非常に日本とつながるということが加味されるということでそう言えるだろうと思います。
 一方、婚姻の場合には、婚姻関係が三年続いておれば日本とのつながりもそれ自体あるわけだから、あと居住の関係は一年でもいいだろう、その両方のどちらかで日本に同化しているという要件があればいいという、それが最低基準だろうといつ考えでございまして、調査の期間ということに力点を置いて考えておるわけではございません。
 なお、これは若干余談になるかもしれませんけれども、婚姻ということによって帰化が簡易にできるというごとで、実務的にときどき仮装婚姻といいますか、実際上それほど婚姻の意思がないのに婚姻という形をとって、帰化許可を受けたら別れてというふうな意図で婚姻をされるという例も聞かないわけではございません。そういうふうなことも頭の片隅にはあったということでございます。

○野間委員 それから八条の一号ですね、「日本国民の子で日本に住所を有するもの」、これはいろいろなつながりがありまして、どういうケースなのかということを、私、今考えておったのですが、この「日本国民の子で日本に住所を有するもの」、これは経過措置の五条で救済されない者を指しているのかどうかさっぱりわからぬのですが、これはどういう場合が想定されておるのですか。

○枇杷田政府委員 これは現行法で申しますと、確かに経過措置の五条で救済される方もこれによって簡易帰化になるという形でございますが、新しい法律になりますとそういうケースは減るといいますか、なくなるわけでございます。しかし、全くそういうことがないわけではありませんので、例えば三条の関係の準正の子供で二十歳を超えておるという者もこれに入ってまいりますし、それからまた、離脱したけれどもまた戻ってきたいとか、そういうような方もあるわけでございまして、これはどういうということを問わず、ともかく日本人の子であって、しかも日本に地縁性があって住所があれば簡易に認めようということで、この要件に当たりさえすればいいということで考えておるものでございます。現行のままのものを、新法になっても削る必要はないという意味で残しておるわけでございます。

○野間委員 そうすると、新法になってもこれでもって申請する、そういうケースもあるということが想定されておると思うのですが、いまお伺いしたことをまた一遍さらに検討してみたいと思います。
 同じ八条の四号ですね、これはどういう場合を想定されておるのか。これも例の経過措置との関係でこういうのが出ておるのかどうか。

○枇杷田政府委員 四号はちょっと特殊なケースでございまして、日本は生地主義をとっておりませんけれども、両親が日本に来て日本で子供が生まれた。しかし、その子供は両親の関係、両親の本国といいますか、国籍を有している国の法律からいたしますと血統主義をとっておらない、あるいは血統主義をとっておっても国外で生まれた者については認めないとか、そういうふうなことで無国籍になるというケースがまれにあります。そういう場合には、日本で生まれたという縁があるわけでございますので、そういう者を無国籍のままでおかないで帰化が容易にできるという道をつけておいていいのではないか。そのためには日本に地縁性がかなり深まるという意味で三年以上引き続き住所を有するということを条件に加えておりますけれども、そういうふうな条件があれば、無国籍者をなるべく解消するという趣旨から簡易な帰化を認めてもいいということで新設した規定でございます。

○野間委員 経過措置と私が申し上げたのは五条ですね、これはこれからずっと論議になると思いますが、未成年者に限るということで、特に沖縄の無国籍の子たち、これは戦後三十八年たっておるわけですから二十歳を超えた人もおるわけです。そういう人はこれでやれということなんですか、どうですか。

○枇杷田政府委員 もしその方の母親が日本人であるというケースの場合には一号でもいくわけです。そういうことでなくて、四号の条件に当たるという方は四号で簡易帰化ということになるわけでございます。

○野間委員 これが経過措置の国籍の取得の特例、五条で、四十年一月一日からということで未成年に限るということはけしからぬ、もっと長く、例えば憲法施行時あるいは現国籍法の施行時にまでさかのぼって当然認めるべきである、これは本人たちの責任ではないのだ、これは私は強い説得力があると思うのです。それを、これはまた飛んで経過措置の五条で聞くのはあれなんですが、何でこういうふうに未成年に切ったのか。特に沖縄の場合にはああいう経過の中で、私どもも調査に行きましたけれども、大変な状態が生まれておるわけで、少なくともこういう人たちに対して帰化という手続でなくて、やっぱり最初から国籍を取得させるという意見ですね、これも私は十分な理由があると思いますが、何でこういうふうに経過措置の中で未成年に限ったのか、その点について。

○枇杷田政府委員 これは、成年に達しておられる方は既に外国人といいますか、日本の国籍がない者として社会生活を営んでおられるので、そういう方については単純な意思表示によって国籍を取得させることは適当ではないという一般的な考え方でそのような経過措置にしたわけでございます。経過措置でございますので、何も沖縄に限った話ではなくて、すべてのケースに妥当することを考えていかなければならないわけでございます。
 そういう面から申しますと、先ほど申し上げましたように、二十歳に達するまで、日本の関係で帰化の手続もとらないし、そして日本国民でないという形で生活をしてこられた方については、一般的には帰化の手続によって日本の国籍を取得するかどうかということを決めるのが適当だということで考えたわけでございますので、沖縄の関係も全く無視したわけではございませんけれども、そういうような考え方から、さかのぼる限度としては二十年ではないかということで、法制審議会でもそのような結論になった次第でございます。

○野間委員 十四条の関係で聞きますが、まず十四条の一項、これはいずれかを「選択しなければならない。」こういう規定です。それから十五条は、これは要するに日本の国籍を選択しない者については「催告することができる。」こういう建前になっておりますが、この十四条では「なければならない。」ところが十五条では「催告することができる。」こういうスタイル、規定になっていますね。選択するのは十四条で義務づけにはなりますが、それでも日本国籍を選択しない者については催告するしないというのは法務大臣の一つの裁量になるというふうに、「なければならない」と「できる」という文言からして私は読めるのですが、その点についてどういう見解でしょうか。

○枇杷田政府委員 十五条で「法務大臣は」「できる」というふうに書いてございますが、これは法務大臣に権限を与えるという意味で「できる」という書き方になっておるわけでございます。

○野間委員 権限でできる、しなくてもいいということを余り詰めてやったら後が大変なので、これは答弁をきょうはもう求めません。
 次に、外国籍の放棄宣言、十四条の二項ですが、この放棄宣言というのは外交上の措置は要らぬのですか。具体的にはどういうようなことをすれば放棄宣言になるのか。どういうことを考えていますか。

○枇杷田政府委員 十四条の二項の日本の国籍の選択の宣言は、戸籍の届け出としてそのような宣言をしますということを届け書に書いていただいてお出しいただければ、それで宣言という効果になるように、戸籍法との関連でそういうふうに決めておるところでございます。

○野間委員 そうすると、それだけでこの十四条二項の要件は満たす、別にこれに基づいて外交上の措置をするということではないんだということですね。

○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。

○野間委員 そうしますと、これは先ほども触れましたのですが、国籍離脱を認めない国との関係で放棄宣言が一体どうなるのかということが具体的な事実関係の中ではいろいろ出てくるのじゃないかという感じがするわけです。特にギリシャの場合ですね。兵役義務を果たさなければならないとき、あるいは兵役義務の猶予期間中のときは、国籍を放棄できない。これは一つの例ですが、こういうのが幾つかあるわけですね。
 そうすると、どうなんですか。放棄宣言はしたけれども、認めない。先ほどちょっと支障ないかということを聞いたのもそういうことが頭にあって聞いたんですけれども、これはこれで国籍については日本の専権事項だから日本の国内ではこういう手続をするんだということはよくわかるのですが、しかし重国籍というと必ず外国との関係が出てくるわけで、だから、こういう点について、今までは例がなかったようですけれども、やはりきちっとこれをやっておかないと大きな外交上の問題が発生する可能性があるのじゃないかと思うのです。法務大臣は先ほど答弁されましたけれども、民事局長、いかがでしょうか、その点について御認識は。

○枇杷田政府委員 日本国籍を選択して外国の国籍を放棄するという宣言は、日本の国に向かっての宣言でございまして、それが直ちに二重国籍の当該外国に何らかの影響を及ぼすものではございません。ただ、その当該国が、イタリアのようにといいますか、我が国と同じような法制をとっているところでは、それによって自動的に当該外国の国籍を喪失するということもあり得ようかと思いますが、ただいまの御指摘のように、いろいろな難しい条件でなかなか離脱ができないという法制の国もございます。そういうところにつきましては、十六条の一項にも書いてございますけれども、離脱ができるような条件になったならば、あるいは自分でそういう条件をつくることができるならば、その条件をつくることによって、外国の国籍を離脱して日本の国籍一本にするように努めてくださいという訓示規定を置いているわけでございます。
 それに従ってやっていただけばそれでいいわけでございますが、それでやらないからといって直ちに日本の国籍を喪失させるとかというふうなことまでは考えておらないわけでございますので、そう外交上特に問題になるということはない。例えば、日本の国籍を選択する宣言をした者については、当該対象の外国について、おまえのところの国籍はないようにしろというふうなことでも申し入れれば、それは外交上の問題になろうかと思いますが、そういうことを考えておるわけじゃございませんので、特にこの規定とかこの制度が外交上の問題になるということは予想されないというふうに考えております。

○野間委員 そうすると、今もお話がありました十六条は訓示規定、努力義務、こういう規定だということなんですね。それはそれで結構です。
 それから十六条の二項、外国の公務員の職に就職した場合、「日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるとき」こうありますね。これはどういう場合を想定されているのか。「著しく反する」というのはどういうような意味を持つのか、よくわかりませんものですから、伺います。

○枇杷田政府委員 これは、日本の国籍を選択するという宣言をすると、同時に、その中身としては、要するに外国の国籍に従った立場には立たないようにするという中身が含まれておるわけでございますが、ところが、自分の志望によって当該外国の公務につくという場合には、一般的にその宣言に反するということになるわけでございますので、したがって、日本の方に選択の宣言をしていながら、むしろ実質は外国の国籍の方に実質的な国籍の意味を見出しているという評価ができようかと思います。
 ただ、そういう場合でも、そうだからといって直ちに日本の国籍の方を喪失させるということもなかなか問題があるだろう。したがって、今申し
上げましたような趣旨が著しく高いようなときに限定をして喪失の宣告ができる道を残しておく必要があるだろうということでつくられた規定でございます。公務と申しましてもいろいろなものがございます。そして各国の法制によりまして、公務員というのがどこまでをいうのかということも違ってまいりますので、そういうことも考慮して「著しく」というふうな限定づけをする必要があるだろうということでこのような規定になったものでございます。

○野間委員 三項の聴聞というのは、また新たな聴聞の規定なんかをつくるのですか、それとも今ある法制度を使うのですか、どうするのですか、これは。

○枇杷田政府委員 これは一般的に行政処分で、殊に国籍をなくすというような効果を生ずる重大なことでございますので、そういう場合には聴聞の機会を与えてするというのが現在の行政法の体系の中では必要だということで設けられたわけでございますので、これは一般的な行政手続の聴聞のやり方でやるということを意味しておるわけでございます。

○野間委員 経過措置について若干お聞きしたいと思いますが、三条の場合には、「この法律の施行の際現に外国の国籍を有する日本国民はこれは文字どおり重国籍者ですが、この場合には国籍の選択をしないときには十四条二項による選択の宣言をしたものとみなす、こういうことですね。そうすると、これは自動的にといいますか、選択しなければ日本の国籍を選択したという取り扱いになるわけでしょう。これは十四条の場合にはそうではなくて、選択を迫って、そして日本の国籍を催告によって喪失させる。だから、経過措置の三条とは逆と申しますか、国籍のウエートの置き方が。これはある意味では非常にいい規定だと思うのですが、同時に、一方的に日本の国籍を取得してそして重国籍、積極的に抵触だということで向こうも排除されるということになったら困る人も出てくるのではないかということも考えられると思うのですけれども、法のスタイルとして、十四条の場合と経過措置の三条の場合と違うのはどういうわけですか。

○枇杷田政府委員 この規定は、今既に現に二重国籍になっておられる方につきましては新法の適用の関係ではどういうふうにしたらいいかということが一つの問題でございますけれども、既に重国籍になっておられる方についても重国籍はなるべく解消することが望ましいということが新法の精神でございますので、したがって、十四条一項の規定の適用はあることにしようではないか、したがって選択の宣言をするといいますか、要するに国籍の選択をしていただきたいということは一つの義務としてかぶせることにします。そして、その期間は、要するに新しい法律が適用されたときに重国籍になったということで十四条の期間計算はしていただこうということでございます。
 したがって、その定められた期限内にどちらかの国籍を選択するということをしていただきたいということでございますが、もし仮に、それを何もしなかった、要するにどちらの国籍の離脱もしない、あるいは日本の国籍を選択するという宣言の届け出もなさらないという方について、一般原則の法務大臣の催告によって何も応答がなければ日本国籍を喪失するという効果まで既に二重国籍になっている方に及ぼすということはどうであろうかということで、既得権という言葉はおかしいのでございますけれども、そういうことがないということで生活をずっとしてこられた方については、むしろ何も言ってこられなかった場合に、先ほどお話がございましたように逆転しまして、日本の国籍をむしろ確保したいという推定を働かせていいのではないかということに決めたわけでございます。
 ただ、これはこの十四条の関係、それから十五条の関係についてそのような効果を考えているわけでございまして、これは法律的に、要するに簡単に言えば法務大臣が催告しないという効果をここで導き出したものでございまして、本人の意思によって選択したということになるわけのものではございませんので、したがって、恐らく外国の方での受け取り方としても、自己の意思によりあるいは自己の志望によって云々という扱いにはならないであろうというふうに考えます。

○野間委員 戸籍法の関係、氏の変更ですね、これは氏の変更の届け出をすることができるのは、「届出の期間は、施行日から六月とする。」つまり施行日から六カ月前に結婚した場合に限るわけですね、この経過措置からすれば。それ以前に結婚した者は、逆に裁判所の許可なしに届け出をすることができないとなるわけでしょう。その場合には、それ以前に結婚した場合には、これは本則に基づいて裁判所の許可を得て氏の変更をするということになるわけですか。

○枇杷田政府委員 そのとおりでございます。

○野間委員 この戸籍の記載の仕方ですが、外国人と婚姻した日本人について新たな戸籍を編製するわけですが、記載の中身については相手の外国人がどういう――これは外国人ですから、直接の日本の戸籍上の当事者にはならないのは当然だと思うのですが、従前の記載の仕方と法施行後は新たに何か変わるのですか、どうですか、同じですか。

○枇杷田政府委員 現在は、身分事項欄にどこそこ国籍のどういう方、生年月日何年何月というような方と婚姻したという旨が書かれるわけでございますが、新しい法制になりましても、身分事項欄に婚姻の相手方を書くということは変わりないわけでございます。

○野間委員 戸籍法の百四条の三、国籍の選択ですね、選択しない者は催告する、その催告の一つの基礎として市町村長が「監督法務局又は地方法務局の長に通知しなければならない。」こういう規定がありますね。これは自治体の関係者などに聞きますと、自治体で実際にこんな掌握ができるのだろうか。しかも、言ってみれば二十年たってからになりますね。その間ずっと掌握しておかなければならぬというようなことでどうなのかということ、あるいは逆にこれは国家がそういうものを全部全国的に掌握することがいいのかどうか、別の判断もあるわけですね。そこで、人権侵害にならないようにということは当然の要請だと思うのですが、その人権侵害にならないように具体的な方途を考えておられるならば、それを聞かせてほしいということと、それから市町村長がどういうような手段でこれを掌握できるのかよくわかりませんので、その点聞かしておいてください。

○枇杷田政府委員 重国籍者を漏れなく厳密に把握しようということになりますと、あるいは国なりあるいは市町村なりで重国籍者名簿というようなものでもつくってというふうなことも考えられなくはないと思いますけれども、私どもはそのような名簿をつくるということは全く考えておらないわけでございます。ただ一方、法務大臣は選択をしなければならない者がそれを怠っておるということに基づいての催告をする手がかりは必要なわけでございまして、外国人との婚姻で生まれた子供であるということは戸籍を見ればわかります。そしてまた生地主義との関係で重国籍の場合には留保の旨が戸籍に書かれております。それによってわかります。そしてまた、ほかのことで選択の宣言をした場合にはそのことも戸籍に書く、あるいは外国の国籍を離脱したという場合も戸籍に書くというふうなことでありますので、重国籍であると認められる事実は戸籍の記載から一応推測がつく程度のものはある。そしてそれが単一の国籍になったということをうかがわせるに足ることも戸籍事項になるということでございますので、戸籍を見れば、外国の国籍法がよくわからないというような問題を除きますと、地元市町村でそれほど苦労なく発見することができるわけでございます。
 それも市町村の方についてある一斉の日に一斉点検をするというふうなことまで期待しているわけではございませんので、婚姻届だとか、あるいは転籍だとか、あるいは謄抄本の請求だとか、そういう機会にしょっちゅう市町村の戸籍吏員の方
は戸籍簿を見ておられるわけなんで、それで二十二歳を過ぎて何ら重国籍解消の記載がないという者については、その都度かあるいは若干の期間取りまとめたものを法務局長の方に通知していただこう、法務局の方では、それを今度は相手の外国の国籍法と照らし合わせて重国籍であるかということも検討をさらに加えて、そして法務大臣の催告の基礎にしようという考えでおるわけでございまして、重国籍者名簿などというようなものをつくるということになりますと、ある面では重国籍者の管理を特別にするというふうな誤解も招きかねませんし、また市町村の方でもそれなりの手間とか経費とかかかりますので、戸籍事務の普通の流れの中でそういう資料が出るような方法を工夫してやりたいという考えでおるわけでございます。

○野間委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、六日でしたか、参考人から意見を十分お聞かせ願って、その上でさらにまた検討させていただきたいと思います。
 終わります。


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